著者
矢田 勉
出版者
至文堂
雑誌
国語と国文学 (ISSN:03873110)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.p44-59, 1995-12
著者
鈴木 広光 矢田 勉
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、印刷術の導入と出版メディアの発達によって、平仮名の字体・書体がどのように変容したのかを明らかにすることである。古活字版と江戸時代の整版本の印刷書体の特徴を明らかにするため、文献資料を高精度のデジタル画像におさめ、印字の画像にアノテーションを付けるという新しい分析方法を採用した。研究の成果は以下の通りである。(1)嵯峨本『伊勢物語』慶長13年再刊本における全ての印字の調査を行い、活字の種類とその使用状況を明らかにした。また同書の印字標本集を編纂した。この調査によって、再刊本に使用された活字のうち、この刊本で使用するために新彫された活字はわずかに三割であり、残りの七割は初刊本の活字を再利用したものであることが判明した。従来、再刊本は主として新彫された活字で印刷されたといわれてきたが、この調査結果はその説を訂正するものである。(2)嵯峨本とその他の平仮名交り文の古活字版における活字の書体を比較し、その特徴を分析した。その結果、ほとんどの古活字版において、規格化された活字サイズによる仮名文字の均一化が確認された。その一方で、嵯峨本では仮名文字の伸びやかさを再現するために、さまざまな工夫がなされていることが明らかになった。(3)江戸時代の整版本については、平仮名書体の通時的な推移の様相を明らかにするために、前期の資料と後期の資料の比較を試みた。調査の結果、前期の版本と比較して、後期の版本には、連綿の減少、文字の大きさの均一化、書体の定型化といった特徴が見られることがあきらかになった。
著者
矢田 勉
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度も、昨年度以前に引き続き、近世文学研究書の原本調査作業を行った。国文学研究資料館や東京大学付属図書館等において、昨年度までの調査の遺漏を補う作業を継続するとともに、加えて新たに亀田鵬斎・清水浜臣・高橋残夢の三人の文学研究にかかわる著作に就いては特に集中的な調査を行った(高橋残夢については、岡山県立図書館・京都大学付属図書館を中心に調査を行った)。その結果、特に高橋残夢の文学研究に就いては、音義説との関連から、あらためて国語意識史・文学研究史の上に正確に定位する必要があること、特にこれまでの定家仮名遣い派と歴史的仮名遣い派の二派の対立軸から捉えられてきた近世の仮名遣い研究史のあり方について、「音義仮名遣い」とでも言うべき領域を加えて、より多角的に記述しなおす必要があるという知見を得た。その問題については現在論文の準備中である。また、これまでに得られた近世の文学研究に関する基礎的データは、随筆等の非研究書における文字に関する記述の集積も含めて、データーベース化を進めており、公開を目指して今後、整備を継続する予定である。更に、文字に関する思索が研究の形式を採る以前の時代の文字意識史に関する研究も継続的に行い、今年度は、近年、文字研究市場で特別な位置を与えられてきた藤原定家の文字意識について、その書き残した書記資料から実証的に再検討した論として「定家の表記再考」を、また、更に平安時代におけるより一般的な文字意識のあり方を文字教育の実態という方面から検討した論として「平安後・末期における初歩的な書字教育のあり方について」を、それぞれ公にすることを得た。
著者
矢田 勉
出版者
神戸大学
雑誌
文化學年報 (ISSN:02868105)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-17, 2005-02