著者
榛葉 賴子 矢田 大輔 小田 彩子 東堂 祐介 伊藤 敏谷 鈴木 康之
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.59-63, 2020

腟内異物が放置される例は、産婦人科ではまれに経験される。症例は 50 歳。スプレー缶の蓋を腟内に自己挿入し、抜去できずに約2年間放置していた。抜去目的に当院を紹介され、腰椎麻酔下に子宮把持鉗子で抜去した。抜去された異物は、石灰化物質で覆われており、成分分析では、リン酸カルシウムとリン酸マグネシウムが検出された。報告では腟内のカルシウムイオン、マグネシウムイオンは尿の成分に由来 すると結論づけられるものが多い。腟内異物の症例では膀胱腟瘻を来していることも多い。本症例では画像検査で膀胱腟瘻などの解剖学的異常はなく、抜去可能であった。長期間放置された腟内異物の診療では、膀胱腟瘻などの解剖学的異常も含め、画像検査で評価することが有用である。
著者
江藤 千佳 矢田 大輔 松本 雅子 飯田 瀬里香 小田 智昭 成味 恵 幸村(小林) 友希子 磯村 直美 内田 季之 鈴木 一有 伊東 宏晃
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.131-136, 2019

環状第3染色体は稀な様々な表現形を呈する染色体異常であり、これまでの報告例は13例である。症例は30歳、1妊0産、身長137cm。3歳で低身長を主訴に小児科を受診し、環状3番染色体の指摘を受けた。妊娠22週に頸管無力症に対し頸管縫縮術(マクドナルド法)を行った。その後、腸閉塞、尿路外溢流を発症し、妊娠23週に皮膚腸管瘻形成術、尿管ステント挿入術を施行した。妊娠30週に陣痛発来し、妊娠30週1日、体重1726g 41cmの男児を経腟分娩した。本症例では、腸閉塞と尿路外溢流の発症の原因は妊娠子宮の圧迫であったと考えられた。低身長の妊婦が正常発育の胎児を妊娠した場合、妊娠子宮の圧迫症状のリスクに留意する必要がある。本症例が環状3番染色体を持つ女性の初めての妊娠、出産報告である。