著者
江藤 千佳 矢田 大輔 松本 雅子 飯田 瀬里香 小田 智昭 成味 恵 幸村(小林) 友希子 磯村 直美 内田 季之 鈴木 一有 伊東 宏晃
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.131-136, 2019

環状第3染色体は稀な様々な表現形を呈する染色体異常であり、これまでの報告例は13例である。症例は30歳、1妊0産、身長137cm。3歳で低身長を主訴に小児科を受診し、環状3番染色体の指摘を受けた。妊娠22週に頸管無力症に対し頸管縫縮術(マクドナルド法)を行った。その後、腸閉塞、尿路外溢流を発症し、妊娠23週に皮膚腸管瘻形成術、尿管ステント挿入術を施行した。妊娠30週に陣痛発来し、妊娠30週1日、体重1726g 41cmの男児を経腟分娩した。本症例では、腸閉塞と尿路外溢流の発症の原因は妊娠子宮の圧迫であったと考えられた。低身長の妊婦が正常発育の胎児を妊娠した場合、妊娠子宮の圧迫症状のリスクに留意する必要がある。本症例が環状3番染色体を持つ女性の初めての妊娠、出産報告である。
著者
仲谷 美沙子 田島 浩子 川西 智子 高橋 慎治 内田 季之 鈴木 一有 古田 直美 伊東 宏晃 徳永 直樹 金山 尚裕
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.50-57, 2014

胎児と胞状奇胎が認められる病態には、胎児が存在する部分胞状奇胎の場合と、正常胎児・全奇胎の双胎の場合がある。今回、我々は胎児が共存する部分胞状奇胎と診断された3例を経験した。3症例とも妊娠初期に稽留流産となり、子宮内容除去術が施行された。そのうち2症例では、施術前に胎盤の超音波断層法像に異常を指摘されておらず、子宮内容除去術後に診断された。胞状奇胎の超音波像は多彩であり、必ずしも典型的な嚢胞状所見を示さないこともある。胎芽(児)を超音波で描出する稽留流産の場合、稀ではあるが胎児共存奇胎の可能性を念頭に置き、慎重に超音波検査を行い、胎盤・絨毛組織の病理検査を怠らないことが重要であると考えられた。