著者
矢野 武志
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

敗血症性ショックは、過度の血管拡張がもたらす持続的な低血圧状態であり、血圧の維持に難渋する場合が多い。血管拡張の原因物質は過剰な一酸化窒素であり、これは高度な炎症の結果発現した誘導型一酸化窒素合成酵素によって作り出される。過剰な一酸化窒素存在下ではカテコラミン類の感受性が低下し、有効な昇圧作用を得るためには多量に投与する必要がある。血管平滑筋の収縮と弛緩は、平滑筋構成タンパク質であるミオシン軽鎖のリン酸化および脱リン酸化によって引き起こされる。本研究では、ラットから摘出した大動脈を用いて、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬の血管収縮作用について調べた。ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬は濃度依存性に血管収縮作用を示し、一酸化窒素供与体であり血管拡張物質であるニトロプルシドナトリウム存在下でも血管収縮作用は変化しなかった。また、血行動態への影響を調べるため、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬をラット生体モデルに経静脈的に投与したが、血圧と心拍数に変化は生じなかった。