著者
西村 絵実 田中 信彦 橋口 浩志 渡部 由美 山賀 昌治 恒吉 勇男
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.23-26, 2014 (Released:2014-03-12)
参考文献数
9

両側の膝下部から足背部までの感覚障害と足底部のアロディニアがあった患者に対して,集学的治療を行った.症例は14歳,女児.足底部に針で刺されるような痛みが出現し,歩行困難となった.小児の複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)の特徴を有していたが,診断基準を満たさなかった.当科で両足底部に8%リドカインを用いたイオントフォレーシスを施行しながら,患者・家族との信頼関係の構築に努めた.精査で異常を認めず診断に難渋した.その後,小児精神科で身体表現性障害と診断され,ミルナシプランの内服を開始した.同時期よりリハビリテーション部で歩行訓練を開始すると,独歩が可能となり初診から1年後に完治した.慢性痛の小児に集学的治療を行い,痛みが消失し,社会生活が可能になった.
著者
矢野 隆郎 山内 弘一郎 丸田 豊明 丸田 望 窪田 悦二 竹智 義臣 恒吉 勇男
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.375-380, 2011-07-01 (Released:2012-01-15)
参考文献数
9

【症例】34歳,男性。【病歴と経過】化学工場で深さ2 mの35%塩酸タンクに転落し,約10分間全身が塩酸に浸り,転落から10分後(転落の目撃者なく最長予測時間)に発見され,約18分後に当院に搬送された。来院時,意識清明で発語も認めたが,顔面・頭部を含む全身熱傷のため気管挿管した。動脈血液ガス検査で,pH 6.76,PaCO2 26.3 mmHg,PaO2 268 mmHg,BE -27.8 mmol/l,乳酸値124 mg/dl,P50 98 mmHgと高度な代謝性アシドーシス,高乳酸血症,P50の上昇を認めた。重炭酸ナトリウム250 mlを投与したところ,PaO2 492 mmHg,P50 34 mmHgと一時的な改善を認めたが,多臓器不全が進行し2日目に死亡した。【結語】塩酸が皮膚から大量に吸収され,高度な代謝性アシドーシスとP50の上昇を合併した症例を経験した。症状の進行が急速かつ重篤であり,救命には至らなかった。文献上同様な報告は見当たらなかった。
著者
興梠 健作 矢野 隆郎 山内 弘一郎 河野 太郎 竹智 義臣 恒吉 勇男
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.175-181, 2012-04-15 (Released:2012-06-12)
参考文献数
17

近年小児領域でも,蘇生後脳症に対する脳低温療法が注目されているが,目標温度や維持期間等の冷却方法に関して,未だに一定の見解は得られていない。今回心肺蘇生後偶発性低体温症を合併した,溺水蘇生後脳症の6歳の男児に対し,脳温34℃から復温を緩徐に行った。患児の最大予測心肺停止時間は30分で,心拍再開6分後に自発呼吸が出現し,40分後に対光反射を認めた。来院時直腸温は31℃,ICU入室前に33.9℃まで復温したが,以後は前額深部温度を脳温としてモニターし,水冷式ブランケットを使用して11日かけて34℃から36℃台に復温した。18日後に人工呼吸器から離脱し,6か月後には自力で経口摂取,歩行,単語の発語が可能となった。本症例は,偶発性低体温症となった溺水蘇生後脳症の小児症例であり,長期神経学的予後の面から,34℃からの緩徐な復温を用いた体温管理が有効であった可能性がある。
著者
恒吉 勇男 永田 悦朗 當房 和己 竹原 哲彦 上村 裕一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.119-123, 2004 (Released:2005-03-31)
参考文献数
12

敗血症を合併し長期間臥床を余儀なくされた患者で多発性に骨化性筋炎を発症した症例を経験した. 患者は61歳男性. 前交通動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対し緊急開頭クリッピング術を施行した. 術後に肺炎から敗血症を合併し, 約2ヵ月間意識障害を呈した. 初期より強い痙縮を伴った下腿関節の拘縮が出現したため, 関節可動域増強訓練を施行した. また, 排痰を目的として, 患者を定時的に腹臥位とした. しかし, 第40病日ごろから下腿関節部および肩・肘関節部の可動域が著明に低下し, 単純X線所見で多発性に異常骨化像が認められた. 長期臥床を要する患者では理学療法が必要とされるが, 骨化性筋炎の発生には十分注意すべきである.