著者
矢野 香代 大浜 敬子 産田 真代
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.175-183, 2007

都市社会の夜型化は地域の大人の生活にも波及し,その影響を受けて子どもの生活の夜型化が問題視される.母親の睡眠に関する実態・知識・意識及び地域背景が子どもの睡眠習慣にどのような影響を及ぼすかを明らかにし,子どもの睡眠習慣についての基礎資料を得ることを目的に調査を行った.A県B市の2保育園に幼児を通園させている母親180人を対象に睡眠行動・意識等に関する無記名式質問紙法を行った.回答を得た115人(回収率63.9%)を分析対象に,SPSS Ver.12を使用し解析した.その結果,母親の睡眠行動と子どもの睡眠行動は有意に関連していることが認められた.母親の睡眠行動が子どもの睡眠に及ぼす影響を母親が理解することで,双方にとっても良好な睡眠環境が形成されることが期待された.子どもの心身の健康の向上や子どもの望ましい生活リズムの確立のため,母親が求める情報を明らかにし,保健活動の一環として必要な知識を提供していくことが重要であると考えられ,地域看護活動の支援課題としての重要性が示唆された.
著者
塚原 貴子 矢野 香代 新山 悦子 太田 茂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.235-242, 2010

本研究の目的は,大学生が外傷体験を筆記により開示することが,心身の健康に及ぼす影響を検討することであった.実験参加者は,A大学の学生で研究の同意が得られた対象に外傷体験の重症度を測定する出来事インパクト尺度 (Impact of Event Scale Revised:IES-R) の調査を行い得点の高かった12名である.実験は,外傷体験を事実と感情に分けて15分間筆記した後に読み返しをするトラウマ筆記群と,1週間の日常を筆記する統制群とに無作為で分け,3日間行った.開示の影響を評価するため,IES-R調査の他に精神的健康度(General Health Questionnair:GHQ60)調査,唾液アミラーゼ活性によるストレス度調査,近赤外光トポグラフを用いた前頭部の血流測定,継続的な脈拍測定を行った.その結果,IES-R得点,GHQ60の得点がトラウマ筆記群で有意に低減した.身体的な評価指標には個人差があり,明らかな効果は認められなかったが,筆記による開示のストレス軽減効果の可能性は示唆された.