著者
太田 茂
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.226-231, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)

日本薬学会は1880年創立当初より学会論文誌を継続して刊行しており,現在は英文誌として『Chemical and Pharmaceutical Bulletin』と『Biological and Pharmaceutical Bulletin』の2誌と,和文が主である『薬学雑誌』を毎月発行している。これらの学会論文誌はいずれもJ-STAGEによりオープンアクセス誌として公開されている。また,2016年5月に試験的に公開された「J-STAGE評価版」に協力し,英文誌2誌をモデル誌として公開している。J-STAGE評価版は,スマートフォン等のモバイル端末での閲覧が可能となり,特に若い世代における閲覧の増加が期待できると考えている。
著者
原田 亜紀子 杉原 数美 渡部 容子 山路 誠一 北村 繁幸 太田 茂
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.10, pp.1185-1196, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
22
被引用文献数
8

Aryl hydrocarbon receptor (AhR) ligand activity of the extracts of 62 herbal medicines was examined using yeast reporter assay. Fifty-eight herbal extracts exhibited AhR ligand activity. The highest activity was observed with Ogon (Scutellariae Radix), followed by Oren (Coptidis Rhizoma), Kujin (Sophorae Radix) and Shoma (Cimicifiigae Rhizoma). When these extracts were treated with hesperinase, a hydrolase for sugar conjugates, the aglycones showed higher activity than the parent extracts. Among the constituents of Ogon extract, baicalein and wogonin showed AhR ligand activity, while the sugar conjugate of baicalein, baicalin, was inactive. Among the flavonoid components of these herbal medicines, flavone and chrysin exhibited high ligand activity for AhR. Ethoxyresorufin O-dealkylase (EROD) activity due to CYP1A1 in HepG2 cells was enhanced by the addition of baicalein. Baicalein also decreased the 3-methylcholanthrene-induced increase of EROD activity, but this effect was not statistically significant. When wogonin or baicalein was orally administered at the dose of 100 mg/kg to mice, EROD activity in liver was only slightly changed. Furthermore, when Ogon extract was co-administered with 3-methylcholanthrene, the EROD and methoxyresorufin O-dealkylase activities were not significantly changed. These results indicate that many herbal extracts have AhR ligand activity, and their inducing effect on CYP1A1/2 can be evaluated in HepG2 cells.
著者
小野 秀樹 松本 欣三 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

フェニルエチルアミン(PEA)は生体内に存在する微量アミンであり, 精神機能と関わりがあると考えられている. その化学構造や薬理作用は覚醒剤であるメタンフェタミン(MAP)のものと類似しているが, その作用機序は不明である. 本研究においては, PEAのラット脊髄の単シナプス反射増強の機序をMAPと比較しながら研究した. 麻酔ラットの腰部脊髄を露出し腰髄第5髄節の単シナプス反射を記録した. PEA(1mg/kg, iv, )は単シナプス反射を増強した. この増強はα_1-アドレナリン受容体を選択的に遮断するプラゾシンにより抑制された. さらにアミン類を枯渇するレセルピン処理, ノルアドレナリンの合成を阻害するジスルフィラム処理, 下行性ノルアドレナリン神経を破壊する6-ヒドロキシドパミン処理, およびすべての下行性神経を破壊する慢性的な脊髄切断処理もPEAの単シナプス反射増強効果を抑制した. MAP(0.3mg/kg, iv, )もPEAと同様に単シナプス反射を増強した. この増強効果も, α_1-遮断薬, ノルアドレナリン枯渇薬, ノルアドレナリン神経の破壊処理によって抑制され, MAPがPEAと同様の機序で単シナプス反射を増強することが示された. PEAとMAPの作用はセロトニン拮抗薬およびドパミン拮抗薬によっては影響されなかった. またPEAの効果はB型MAO阻害薬のデプレニルによって増強, 延長され, PEAが代謝されないで作用していることが示された. さらにPEAとMAPの単シナプス反射増強作用は血圧変化に起因するものではないことも示された. 以上, PEAおよびMAPは, 脳幹から脊髄へ下行するノルアドレナリン神経の終末からノルアドレナリンを放出させることにより, 単シナプス反射を増強, すなわち, 運動系を亢進させることが示された. さらにPEAが脊髄に比較的高濃度存在することから, PEAが脊髄運動系の調節になんらかの役割を持っている可能性が示された.
著者
北村 繁幸 浦丸 直人 井上 俊夫 鈴木 祐子 尾崎 ひとみ 杉原 数美 太田 茂
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第38回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.20067, 2011 (Released:2011-08-11)

【目的】パラベン類(p-hydroxyalkylbenzoates)は、抗菌作用を有し保存料として食品、化粧品、医薬品等の様々な製品に使用されており、とくに化粧品中では最も頻繁に使用されている防腐剤である。化粧品の特性上、直接皮膚に使用するため、接触皮膚炎などのアレルギー症状が問題となっており、化粧品成分中の防腐剤が感作性物質(アレルゲン)になることが懸念されている。本研究では、パラベン類のアレルギー反応及びアレルギー反応へのパラベン類の代謝の関与を明らかにすることを目的とする。 【方法】代謝実験に供したラット肝ミクロゾームはSD系ラット肝より調製した。被検化合物はラット肝ミクロゾームと共に反応させ、代謝生成物であるp-ヒドロキシ安息香酸をHPLCにて測定した。抗原性試験はモルモットの皮膚反応にて検討した。被検化合物のヒスタミン遊離実験には、Wistar系ラットの腹腔から精製したマスト細胞を用いた。被検化合物をマスト細胞と共に反応させ、遊離したヒスタミンをHPLCにて測定した。 【結果および考察】代謝実験では、ラット肝ミクロソームはパラベン類に対して加水分解活性を示した。ブチルパラベンにて感作したモルモットおいて、ブチルパラベンでは弱いながら皮膚紅斑が認められた。p-ヒドロキシ安息香酸では、濃度依存的なマスト細胞からのヒスタミン遊離作用が認められた。一方、ブチルパラベンでは、低濃度域ではヒスタミン遊離作用は認められないものの高濃度域では認められた。ブチルパラベンにおけるアレルギー反応の発症には、p-ヒドロキシ安息香酸への代謝反応の関与が考えられる。
著者
丸尾 良浩 太田 茂
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.601-608, 2004-12-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
41

Gilbert症候群は軽症の遺伝性非抱合型高ビリルビン血症で, ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子 (UGT1A1) の変異により生じる.まれな重症, 中等症のCrigler-Najjar症候群1型, II型と異なり, Gilbert症候群は人口の3~7%に存在するため, さまざまな血液疾患の3~7%にGilbert症候群の合併がみられる.日本人にはGilbert症候群を起こす2つのUGT1A1の遺伝子多型が存在する.エクソン1のG71Rとプロモーター領域にあるTATA boxのA (TA) 7TAAで, おのおのの遺伝子頻度は0.16と0.15である.そのため, Gilbert症候群であるG71RまたはA (TA) 7TAAのホモ接合体や複合ヘテロ接合体のみでなく, おのおのの変異のヘテロ接合体も血液疾患の病像への関与がみられている.近年, 遺伝性球状赤血球症にGilbert症候群が合併すると胆石の発症リスクが上昇したり, 白血病の化学療法時にUGT1A1の変異をもつ患者には間接型高ビリルビン血症が誘発されることが明らかにされてきている.本総説では, Gilbert症候群と血液疾患の関わりをビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素全般をふまえて概説する.
著者
太田 茂 岩見 美香 成田 努 東野 克巳 鈴木 淳史 多賀 崇 島田 司巳
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC HEMATOLOGY/ONCOLOGY
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.364-368, 1998

Hodgkin病 (以下HDと略) の治療後における心合併症の報告は欧米では多数報告されているが, 本邦ではきわめて少ない.われわれはHDの治療経過中に心タンポナーデを発症し, 治療終了後にtherapyrelated pancytopeniaをきたした症例を経験したので報告する.症例は14歳男児, 前上縦隔原発のHD (nodular sclerosis) でmodified MOPPおよびセミマントルと縦隔部に総計36.3Gyの照射を行った.化学療法6クール目の前半終了後から突然, 胸痛, 胸内苦悶感および呼吸困難が出現した.心嚢穿刺の結果, 心タンポナーデと診断され経皮的ドレナージにて軽快した.細胞診によりHDの浸潤は否定された.その後, 1クールの化学療法後に治療終了となったが, しだいに大球性貧血となり汎血球減少となった.骨髄は低形成であったが, 染色体検査は正常であった.オキシメトロン投与にて経過観察したところ, ほぼ4ヵ月で汎血球減少は改善し現在治療終了後5年を経過しているが無病生存中である.
著者
河野 孝幸 内山 幹男 岸本 俊夫 河田 正興 仲本 博 太田 茂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.79-84, 2009

本研究の目的は,触知覚モールスを盲聾者の新たなコミュニケーション手段として利用することの有用性を検証することである.耳介に密着させた振動子と触知覚信号発生装置を用いて12人の健常者を対象に実験した.モールス符号は,短点と長点の組み合わせで構成されている.触知覚モールスも同様に振動時間に長短の差がある2種類の振動信号(短点,長点)のいずれかを出力することを1〜4回繰り返し,一つの文字を表現する.各点の長さや点相互の間隔は短点提示時間の整数倍に設定している.基本となる短点提示時間を200msに設定して英字26文字を提示し,触知覚モールスと前回の実験で検証した触知覚点字との比較,また,文字間の間隔をモールス通信の基準値(短点提示時間の\3倍の600ms)の2倍,3倍と長くした場合との比較実験を行った.その結果,正解率は触知覚モールス:32.1±6.9%,触知覚点字:100%で,触知覚点字の方が有意に高かった(P<0.01).また,文字間の間隔を基準値の2倍にした場合は97.1±3.7%,3倍にした場合は100%となり,長く間隔を空けた方が有意に高かった(P<0.01).結論として,触覚が正常なら振動でモールス情報が伝達できること,また,モールス符号の初心者については,文字間の間隔を長くすることにより正確さの向上が期待できることがわかった.この結果は,触知覚モールスが盲聾者の新たな通信手段となり得る可能性を示唆している.実験で得た知見を携帯電話に応用すれば,盲聾者が単独で使用できる携帯電話が実現でき,新たなコミュニケーション手段になることが期待できる.
著者
小野 秀樹 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

我々は覚醒剤の構造関連化合物である4-フェニルテトラヒドロイソキノリン(4-PTIQ)が覚醒剤のアミン放出作用を選択的に抑制することを示してきた。本研究においてはまず覚醒剤のドパミン放出作用の作用部位と考えられるドパミントランスポータに対する4-PTIQの直接的な作用について検討した。ラット由来のドパミントランスポータをCOS-7細胞に発現させ、^3H-4-PTIQのドパミントランスポータに対する作用を研究した。^3H-ドパミンの取込実験からNa^+および温度依存性の取込が観察され、COS-7細胞にドパミントランスポータが発現していることが確認された。また、^3H-4-PTIQにおいてもNa^+および温度依存性の取込が観察された。^3H-4-PTIQのドパミントランスポータに対する結合実験をおこなったところ、kd=727nMの特異的結合が明らかになった。以上から4-PTIQはドパミントランスポータに結合して覚醒剤と同様にアミン神経終末に取り込まれるが、覚醒剤が持つアミン放出作用は弱いため、なんらかの機序で覚醒剤のアミン放出作用を抑制するのではないかと考えられた。次に4-PTIQの臨床応用をめざし、覚醒剤慢性中毒のモデルである逆耐性動物を用いた研究を行った。メタンフェタミンを3-4日おきに4回皮下投与すると移所行動増加作用が強くなった。5回目投与前に側坐核にプロプラノロールを投与すると移所行動の増加が抑制されたが、プロプラノロールは覚醒剤の1回目投与では抑制しなかった。4-PTIQは覚醒剤の1回目の投与時でもこれを抑制するため、4-PTIQは逆耐性に選択的とは言えなかった。以上から4-PTIQは覚醒剤慢性中毒モデルには有効ではないと思われ、今後、急性モデルを用いる研究が必要であると考えられた。
著者
太田 茂徳
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2002年 人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
pp.000016, 2002 (Released:2002-11-15)

○発表内容I はじめに 本発表では,明治20年代以降の兼六園の歴史過程を捉え返し,兼六園の「保勝」の問題が戦前期にどのように論じられ,どのような問題点が議論されてきたのかを概観したいと考えている。 明治維新により金沢城の前庭としての兼六園は1つの役割を終えたことになるが,景観・事物の保護・保存という流れ,また都市内の「公園」という流れから,兼六園はこの2つの流れから論じることが可能なように思われる。II 公園としての兼六園の歴史 このうち「公園」としての兼六園の辿ってきた流れについては,太田[2000]において明治初期の状況について論じた。そこでは,明治初期の兼六園が,国家の目的をもってを造られた上野公園と同様に,新時代の到来を演出する「新しさ」の集積地であることが確認された。 明治初期には,兼六園において幾度も博覧会が開かれ,様々な西欧の文物が紹介されている。明治4年に園内には新しくできた鉱山学所の講師として招かれたデッケンの居宅も兼六園内に建てられ,後には勧業博物館として利用されている。兼六園は,最新の技術や知識のもたらされる場として,いわば「西洋への窓」のような場所であったと言えるだろう。兼六園には勧業博物館・図書館・工業学校などの時代の先端をいくような施設が集中的に立地し,そこに多くの人々を集めることによって新しい知識・見識を人々に与えるような場になるのである。このことは,吉見[1987]や橋爪[1990]のいうような意味での博覧会の歴史とも符合している。兼六園も博覧会の開催される場として,博覧会と意味を共有してきたのである。 明治30年頃からは,新しい施設が兼六園内に設置されることは少なくなるが,様々な集会が兼六園内で行われるようになる。旅順陥落祝賀会などの日清・日露戦争の戦勝祝賀会,そして明治天皇の大葬に伴う行事が園内で行われている。こうしたことは,公園と天皇・国家との結びつきを示すような出来事であり,兼六園と国家的な儀礼との結びつきを強調しているように思われる。これ以外にも,戸水寛人の野外演説会が開かれ,昭和4年以降はメーデーの会場として利用されるなど,市民的な行事の場としての位置づけも持っている。III 兼六園保存論の流れ 近年の町並み保存を取り扱った研究として,沖縄県竹富島の「赤瓦の町並み」の保存運動を伝統文化の創造という観点から考察した福田[1996],そして千葉県佐原市の町並みについて,景観の形成過程を商業活動の変遷過程を通して考察した小堀[1999]が挙げられる。これらは,主として1975(昭和50)年の文化財保護法改正による「伝統的建造物群」概念導入以降の過程を扱ったもので,本発表で対象とする明治期の兼六園とは時代背景に差異があるが,こうした町並み保存の問題の前史として兼六園など名勝の辿った歴史的過程を位置付けることも可能であろう。また戦前期の景勝地の保存を扱った研究としては,荒山[1995]が日本の国立公園の成立を「文化のオーセンティシティを創り出す近代的なシステム」として捉えて,文化財や史蹟名勝天然紀念物との関連にも触れながら概観している。 本発表では,これらの研究成果も踏まえ,兼六園の美観を守ろうという議論の流れを把握したいと考えている。
著者
太田 茂 杉原 数美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱帯地域で摂取され、パーキンソン病関連疾患の環境因子としての可能性が考えられるトゲバンレイシ植物より、テトラハイドロイソキノリン(TIQ)誘導体を含む10数種類の物質の構造を決定した。これらの1種は、神経細胞においてプロテアソーム阻害に伴う不要タンパク質の蓄積、小胞体ストレス応答の亢進を惹起した。
著者
小野 秀樹 松本 欣三 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

フェニルエチルアミン(PEA)は生体内に存在する微量アミンであり,精神機能と関わりがあると考えられている。その化学構造や薬理作用は覚醒剤のものと類似している。これらの薬物は様々な薬理作用を発現するが,作用と立体構造の関係は不明である。著者らはすでに、これらの薬物は脊髄反射の系において,少量では下行性ノルアドレナリン神経の終末よりノルアドレナリンを放出させることにより、単シナプス反射(MSR)を増強し、高用量ではセロトニン受容体へ作用することによってMSRを抑制することを示している。本研究においては、ノルアドレナリン放出作用・セロトニンアゴニスト作用と立体構造との関係について実験した。PEAのフェニル基とアミノ基窒素が近い形で固定されていると考えることができるノミフェンシンおよびマジンドールは下行性神経からのノルアドレナリン放出により、MSRを増強した。さらにMSR増強作用と腺条体の〔^3H〕マジンドール結合阻害作用の間には良い相関があった。PEAのフェニル基とアミノ基窒素が遠い形で固定されている2-アミノテトラリン類はセロトニンアゴニスト作用によりMSRを抑制した。光学活性体についてはR体に活性があった。これらの結果から,PEAおよび覚醒剤のノルアドレナリン放出作用は、フェニル基とアミノ基が近い形のコンフォメーションの時に生じ、セロトニンアゴニスト作用は遠い形のコンフォメーションの時に生じることが示唆された。以上、単純な系であり定量的な実験が可能な脊髄反射を用いて得られた結果ではあるが、この解釈は運動量増加作用(脳でのノルアドレナリン放出による)および幻覚作用(脳でのセロトニン_2アゴニスト作用による)にもあてはまるものと考えられた。
著者
井筒 直樹 福家 英之 山田 和彦 飯嶋 一征 松坂 幸彦 鳥海 道彦 野中 直樹 秋田 大輔 河田 二朗 水田 栄一 並木 道義 瀬尾 基治 太田 茂雄 斎藤 芳隆 吉田 哲也 山上 隆正 中田 孝 松嶋 清穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-22, 2008-02

科学観測用に使用されているゼロプレッシャー気球には,昼夜のガス温度差により夜間に浮遊高度が低下するという根本的な問題がある.これに対して,排気口がなく体積変化がほとんどないスーパープレッシャー気球は,バラストの必要がないため浮遊時間を大きく延ばすことが可能となる.しかし,皮膜に要求される強度が大きいため,小型の球形スーパープレッシャー気球を除いては実用化ができていなかった.我々は,この問題を解決することができるLobed-pumpkin 型気球を考案し,試験開発を行ってきた.多くの地上膨張試験,実際の飛翔環境における加圧破壊試験を繰り返した結果,設計上および製造上に多様な問題があることがわかり,順次これらの解決を図った.その結果,要求される性能を有するスーパープレッシャー気球の設計および製造方法が確立された.
著者
太田 茂雄 松坂 幸彦 鳥海 道彦 並木 道義 大西 晃 山上 隆正 西村 純 吉田 健二 松島 清穂
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-15, 1997-03

低温性能に優れたポリエチレンフイルムの出現により, プラスチック気球による宇宙科学の観測は大幅な進歩を遂げてきた。気球の容積も10^6m^3級のものが実用化され, 2&acd;3トンの観測機器を搭載して高度40km程度の観測が行われるようになってきた。最近ではその成功率はほぼ100%に近い。ポリエチレン気球は優れた安定性を持っているが, ゼロプレッシャ気球であるために夜間気球内のガス温度が低下して, バラストを投下せねば一定高度を保つ事はできない。バラストの投下量は緯度にもよるが, 日本のような中緯度の上空では一晩に10%弱のバラスト投下が必要である事がこれまでの数多くの実験で確かめられている。したがって数日間の浮遊の後には, バラストは使い果たし, 観測を続けることはできない。この欠点を避けるために提案されたのがスーパープレッシャ気球である。スパープレッシャ気球は内圧のかかった気球で, 夜間気球内のガス温度が低下しても, 内圧が低下するだけで容積は変わらず, 水平浮遊の高度を保つ事ができる。バラストの投下が不必要で, 長時間にわたる観測が可能になる。ただし, 内圧がかかるために気球被膜はゼロプレッシャ気球に比べて, 強度の高いものが必要となり, またガスの漏洩があってはならない。最初に着目されたのはポリエステルフイルム(マィラー)である。ただし, マイラーはポリエチレン気球に比べると低温性能がわるく, また気球製作も難しいので, 現在のところ実用上は5000m^3程度の小型の気球のものにとどまっている。より性能の優れた気球用フイルムの研究は現在世界各国で行われており, 近い将来, 高性能の気球が出現し, 観測項目によっては人工衛星にくらべて極めてコストパーフォーマンスのよい気球が出現するものと考えられている。わが国では, クラレ社のEVALフイルムに着目し, その性質を調べると共に, 実際に気球を試作してその性質を調べている。EVALフイルムの際立った特徴はマイラーとほぼ同じ程度の強度を持つと同時に, 熱接着が可能な事, 特異な赤外線吸収バンドを持っている点である。スーパープレッシャ気球の材料として有望である。また同時に, 赤外線吸収バンドの関係で, 夜間での気球内ガス温度の低下がポリエチレン気球に比べてほぼ半減し, バラストの消費量が著しく節約できる事が期待出来る[1]。1996年の初めに小型のEVAL気球の試験飛翔を行なったが, その結果は良好であった。今後, 更に小型気球の飛翔試験を行い, 大型化して長時間観測のための優れた性能を持つ長時間観測用の気球を完成したいと考えている。ここではまず長時間観測システムの現状を概括する。ついでEVALフイルムについての特性, 特に熱接着法, 低温における接着強度と赤外の吸収バンドについて述べる。最後に昨年行われた, 試験飛翔の結果の解析, ついで将来のEVAL気球の展望について触れる事とした。資料番号: SA0167081000