著者
石井 クンツ昌子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.83-93, 2004-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31
被引用文献数
4

不登校, ひきこもり, 青少年犯罪など子どもに関する様々な問題はあとを絶たない。これらの要因のひとつとして子どもの社会性の欠如があげられると同時に親子関係の問題も指摘されてきた。日本の親子関係に関する研究は主に乳幼児の発達と母親を対象にしたものが多く, 父親が子どもの社会性にどのように影響しているかについての研究は少ない。さらに就学児の社会性と父親の子育て参加の関連についての研究はほとんどなされていない。米国の研究についても同様なことが指摘される。本稿では父親の子育て参加が就学児の社会性に及ぼす影響に焦点をおき, 母親の子育て参加, 父母の年齢と教育程度, きょうだいの数, 子どもの年齢と性別, そして家族構造などの影響を解明する。日米のデータを重回帰分析した結果, 父親の子育て参加が活発であるほど就学児の社会性が高いことが明らかになった。さらに子どもの社会性に関しては子どもから見た父親の子育て参加が父親自身から見た子育て参加よりもより強い影響を示していることも解明された。
著者
多賀 太 石井 クンツ昌子 伊藤 公雄 植田 晃博
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.7-19, 2023-04-30 (Released:2023-05-31)
参考文献数
24

近年の国際的ジェンダー平等政策では,男性のケア関与に焦点を当て,理想的な男性のあり方としてのケアリング・マスキュリニティ(CM)をキーワードとして用いている.しかし,男性のケア行為参加がジェンダー平等を促進する効果は限定的との先行研究もあり,そもそもCMを構成する諸要素間の関係性に関する十分なエビデンスは得られていない.そこで本研究は,7歳未満の子どもを持つ父親を対象とした調査データを用い,CMの構成要素に関する諸変数で階層別クラスター分析を実施した.その結果,男性たちが,単にCMの程度が高いか低いかの二極モデルでは捉えきれない形で多様化していることが明らかにされた.すなわち,「ケア行為」の頻度が高い男性たちの間でさらに,「ジェンダー観」が非伝統的で「生活の質」も高い「非伝統的男性性」と,「ケアの態度」の程度は高いが「ジェンダー観」は伝統的で「生活の質」が低い「葛藤的男性性」への分化が確認された.