著者
石井 敦士
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

小児交互性片麻痺(AHC)は生後早期の異常な眼球運動で発症することが多く、1歳半までに発作性の片麻痺を呈す。また、てんかんや多彩な不随意運動を随伴症状とする。特異的検査所見はなく、治療法も確立されたものはない。我々はAHC責任遺伝子を同定することを目的に、次世代シークエンサーでの全エクソーム解析をAHC患者8名に対して施行した。その結果、8名全員でATP1A3遺伝子にミスセンス変異をヘテロ接合で認めた。両親に変異は存在せず、ATP1A3遺伝子のヘテロ接合での新生ミスセンス変異がAHCを引き起こすことが解明できた。また、遺伝子型と表現型解析によりE815K変異患者では有意な相関を認めた。
著者
元木 崇裕 佐々木 征行 石井 敦士 廣瀬 伸一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.133-136, 2016 (Released:2016-03-26)
参考文献数
12

症例は3カ月の女児. 生後数日より発作性の異常眼球運動と姿勢の異常を不定期に認めていた. 左右の眼球が発作性に別々に外転位や眼振を繰り返していた. また片側性のジストニア姿位も認めていた. この特徴的な左右非対称性異常眼球運動およびジストニア姿位より小児交互性片麻痺 (alternating hemiplegia of childhood ; 以下AHC) を疑った. ATP1A3遺伝子解析を行いAsp801Asn変異が確認された. AHCは左右不定の片麻痺発作を繰り返す非常にまれな疾患である. 多くは生後6カ月以内に発症するが, 初発症状として見られるのは片麻痺発作ではなく異常眼球運動や全般性強直けいれんであることが多い. AHCの異常眼球運動の特徴として左右非対称性の眼転位や眼振があげられる. AHCは各種検査で特徴的な所見を示さず, 片麻痺発作発症前は確定診断が困難である. 近年はflunarizineの運動発達退行を防ぐ可能性も示唆されており, 早期診断がより重要となる. 左右非対称性の異常眼球運動が新生児期や乳児期早期に認められた場合はAHCを積極的に疑い, 遺伝子解析を考慮すべきである.