- 著者
-
石井 隆太
- 出版者
- 日本マーケティング学会
- 雑誌
- マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.3, pp.86-94, 2019-01-17 (Released:2019-01-17)
- 参考文献数
- 39
国際マーケティング論や国際流通論における最重要トピックの一つは,輸出チャネルの選択である。これまで,大半の既存研究は,企業が単一種類の輸出チャネルを選択すると仮定してきたが,現実世界における数多くの企業は,複数種類の輸出チャネルを選択している。そのため,近年の学術研究は,国際市場におけるマルチ・チャネル戦略,すなわち,マルチ・チャネル輸出に関する研究を展開することが必要であると頻繁に主張してきた。しかしながら,マルチ・チャネル輸出に関するレビュー論文は,未だ刊行されていない。マルチ・チャネル輸出に関する研究の必要性が高まっていることを考慮に入れると,これまでの研究知見を整理し,残された問題点を明確化することは,必要不可欠な試みであると言いうるであろう。そこで本論は,マルチ・チャネル輸出の選択要因を探究した研究潮流,および,マルチ・チャネル輸出が成果に及ぼす影響を探究した研究潮流について概観する。そして,それを踏まえた上で,今後の研究には,(1)既存の研究潮流の拡大,および,(2)新たな研究潮流の形成が求められるということを指摘する。