著者
小野 晃典 菊盛 真衣
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.22-37, 2018 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26

イノベーション普及論の分野における有名な古典理論において,早期に採用した消費者はいまだ採用していない消費者に対して正の口コミを発信するというテーゼがあるが,これに対して,近年,消費者はしばしば高い独自性欲求を有しており,そのような場合には,正の口コミ発信は控えられ,その結果,普及は生じない,という主張が展開されるようになった。しかしながら,この主張は,独自性欲求を一次元的にとらえた上で展開されている点に問題を抱えている。本論は,独自性欲求を三次元に分類した上で,正の口コミを抑制する効果を有するのは特定の種類の独自性欲求のみであり,独自性欲求の高い消費者が必ずしも正の口コミ発信を控えるとは限らないと主張する。
著者
菊盛 真衣 石井 隆太
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.56-67, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
25

本研究は,グローバル企業が自社Webサイトを現地の文化に適応化させる度合い,つまりWebサイトにおける文化的カスタマイゼーションの度合いが現地消費者のWebサイト使用容易性にどのような影響を及ぼすのか,そして,その影響が制御焦点の違いによってどのように異なるのかを検討した。実証分析に際して,日本に進出するアメリカ企業のWebサイトを対象に内容分析を行い,その後,消費者調査を行うことによってデータを収集した。実証分析の結果,Webサイトにおける文化的カスタマイゼーションは情報取得の容易性およびナビゲーションの容易性という2種類のWebサイト使用容易性に正の影響を及ぼすということが示された。加えて,促進焦点はその正の効果を促進するということが示された。この知見から,本研究は,グローバル企業は自社のWebサイトに現地の文化的価値観を反映させる必要があり,そうするべきなのは,予防焦点型の消費者というより,促進焦点型の消費者に対してであるという含意を提供する。
著者
石井 隆太 菊盛 真衣
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.52-67, 2018-09-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
47

今日,実店舗とオンライン店舗の両方で買物する消費者,すなわち,マルチ・チャネルショッパーが増加している。既存研究は,マルチ・チャネルショッパーの制御焦点が店舗選択に影響を及ぼすということを示唆してきた。しかし,(1)チャネル属性の知覚水準に影響を及ぼしうるオンライン購買経験を考慮に入れていない点,および,(2)消費者の店舗推奨行動を検討していない点において問題が残されている。これらの問題に対応するために,本論は,マルチ・チャネルショッパーの制御焦点が店舗選択・推奨に及ぼす影響,および,その影響に対するオンライン購買経験の調整効果を検討する。シナリオ法を用いた調査を実施し,241名の参加者からデータを収集した。回帰分析の結果,予防焦点は,オンライン店舗(対実店舗)の選択および推奨行動に負の影響を及ぼす一方,消費者のオンライン購買経験が多い場合,促進焦点は,オンライン店舗(対実店舗)の選択および推奨行動に正の影響を及ぼすということが見出された。こうした知見を提示することで,本論は,消費者のチャネル選択に関する研究,クチコミに関する研究,および,制御焦点理論に関する研究の進展に貢献を成すだろう。