著者
大澤 真木子 近藤 恵里 鈴木 暢子 平山 義人 原田 淳子 鈴木 典子 斎藤 加代子 福山 幸夫 石原 傳幸
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.95-109, 1996-03-25

先天性筋ジストロフィー(CMD)という語は,生下時または生後数ヵ月以内に筋力低下を示し,筋生検ではジストロフィー変化を示す乳児に対し広く用いられてきた.本邦では知能障害を伴う福山型CMDが知られ症例も多い.欧米例は,一般に知能障害は伴わず,筋症状だけを示すと考えられてきた.Nogenが知能は正常であるがCT上白質の瀰漫性の低吸収域を呈するCMD例を報告し,続いて同様の症例が報告され,知能障害は伴わないが中枢神経系に異常のあるCMDの存在が注目を浴びるようになった.1994年にこれらと臨床像が一致する例でメロシンの欠損が認められ,遺伝子座は6q2に存在することが判明した.我々は,生下時より著明な筋力低下を呈し,知能正常,瀰漫性白質低吸収域を呈するCMD例を経験し1981年CMDII型として報告した.さらに,知能正常,生後まもなく筋力低下を示し,筋生検ではジストロフィー変化を呈する同様な例を3例経験した.いずれも生後3ヵ月以前に発症し,定頚が7ヵ月以降と遅れていた.しかしながら,1例を除き坐位保持は1歳未満で獲得しており,いざり這いも可能となった.仮性肥大を認めず,顔筋罹患は軽度に止まり,年長時には顔が細長く見える.1例は, 22歳まで経過観察したが,4歳時および19歳時の頭部CTではいずれも瀰漫性白質低吸収域を認め,両所見に差は認めなかった.最高運動機能はいざり這いで,2歳6ヵ月より11歳まで可能であった.同様の本邦報告例は散見されるが,16年間という長期経過を観察可能であった例は他になく,本邦および欧米例の文献展望を加え,本症の位置付け,分類上の今後の問題点などを検討報告した.