著者
石原 元
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.241-285, 1987

北西太平洋産ガンギエイ属Rajaの標本を, この海域のほぼすべてのnominal speciesのtype標本と比較した結果, 従来イサゴガンギエイとされていた種は新種<I>R.(Okamejei) boesemani</I>であることが明らかとなった.北西太平洋産オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I>の中でこの種は, 尖った吻, 長いprocaudalおよびpost-dorsal length, 広いinterdorsal distance, 体盤上の黒色粒状斑点, 縦扁したscapulocoracoidを持つことなどで, キテンカスベ (新称) <I>R.(O.) hollandi</I> Jordan et Richardsonに極めてよく似ていて, Ui (1929) 以来両種は混同されてきた。しかしイサゴガンギエイはキテンカスベと, ややせまいinterdorsal distance, 黒色粒状斑点が集合したrosette-like patches, 胸びれ腋部の1対の黒色ring, 前側方突起が長く延長するatr 1 clasper cartilage, scapulocoracoidに円形のanterior fenestraを持つことなどで区別される.<BR><I>Raja porosa</I> G&uuml;ther, <I>R. fusca</I> Garman, <I>R. japonica</I> Nystr&ouml;m, <I>R. tobae</I> Tanaka, <I>R. katsukii</I> Tanaka, <I>R. meerdervoortii</I> sensu Jordan and Fowler (1903) はいずれも<I>R.(O.) kenojei</I> M&uuml;er et Henleのjunior synonymであることが判明したので, コモンカスベの学名は<I>R.(O.) kenojei</I>となる。<I>Raja (O.) meerdervoortii</I> Bleekerはvalidな種で, メダマカスベ<I>R. macrophtholma</I> Ishiyamaのsenior synonymであることが明らかと。なったガンギエイ<I>Raja kenojei</I> sensu Okada et al.(1935) は<I>R.(Dipturus) kwang</I>-tungensis Zhuのjunior synonymと判明した。以上のことからIshiyama (1967) が記載したテングエイ亜属<I>R.(Dipturus) </I>4, オカメエイ亜属<I>R.(Okamejei) </I> 7, 計11種の内5種は学名が変更される.本論文の1新種を加えて北西太平洋には, テングエイ亜属5, オカメエイ亜属6, 計11種のガンギエイ属魚類が分布することになった.この11種に北東太平洋産テングエイ亜属の2種, <I>R.(D.) binoculata</I> Girardと<I>R.(D.) rhina</I> Jordan et Gilbertを加えた13種の検索表を作成した.
著者
石山 礼蔵 石原 元
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.71-90, 1977

水産庁ならびに東京水産大学の採集により得られた北西太平洋のソコガンギエイ類(<I>Bathyraja</I>)の標本から, 1)体各部の相対長, 2)計数的諸形質, 3)斑紋の有無, 4)体背面に分布する大小の疎の有無, 5)軟骨性頭蓋の構造, 6)交接器の構造, 7)卵殻の構造などの組合せで, この海域に分布する既知11種のソコガンギエイとは異なる5種が区別された.<BR>上記5種はそれぞれ新種として, 噴水孔前縁が深くくぼむツムラカスベ<I>Bathyrja caeluronagracans</I>.やや小さい交接器を持つノトロカスベ<I>B.notoroenais</I>, 体背面に白色斑のあるモンツキカスベ<I>B.trcaculata</I>, 体背面の肥大棘が連続して並ぶコマンドルカスベ<I>B.lindbergi</I>, 体背面の小棘がまばらなスベスベカスベ<I>B.minispinosa</I>と命名した.<BR>石山が1952年に発表したマツバラエイ<I>B.matsubaraa</I>は前4種と諸形質が類似し, 殊にこの種の副模式標本は本研究でノトロカスベと同定されたため, 新種5種の記載と共にマツバラエイを再記載し, 6種の類縁関係を動物地理学的に考察した.