著者
林 鐘声 早野 尚志 岡本 力 石原 義紀
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.22, no.11, pp.1290-1296, 1990-11-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
22

心室中隔欠損が自然閉鎖した小学1年生の女児にRubenstein II群の洞不全症候群を認めた.下大静脈欠損・奇静脈結合を合併していたが,気管の分岐,心耳の形態,肺動脈の走行は正位でleft isomerismはなかった.日中の心電図は洞性不整脈,房室解離のみであったが,夜間睡眠中に洞停止が頻回に出現し,最長洞停止は4.48秒であった.電気生理学的検査では,最大自動能回復時間は5,100msecと著明に延長していた.しかし,運動に伴い心拍数は良好に上昇し自覚症状はなかった.下大静脈欠損に洞不全症候群や洞機能低下の報告は文献的に7例あった.left isomerismがあったのは1例,不明6例で,ないことが明らかとなったのは本例が最初であった.発生学的に考えると,下大静脈欠損が生ずる際に,同時期に形成される洞結節にも異常が及ぶ可能性があり,本例はそのために洞不全症候群となったものと推察した.