著者
河崎 一夫 奥村 忠 田辺 譲二 米村 大蔵 西沢 千恵子 山之内 博 中林 肇 東福 要平 遠山 竜彦 村上 誠一 小林 勉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.137-140, 1973-02-15

緒言 高濃度酸素吸入によつて不可逆的眼障害をきたしうる疾患として,未熟児網膜症が知られている1)。本症では網膜血管が著しく狭細化する。成人においても高濃度酸素吸入によつて脳および網膜の血管が狭細になると報告された2)。この狭細化は,高濃度酸素吸入を止めた後には消失した(可逆的)2)。成人で高濃度酸素吸入によつて網膜血管の不可逆的狭細化をきたしたという報告はまだないようである。本報では,生命維持のため止むをえず高濃度酸素を長期にわたり吸入した重症筋無力症成人患者で起こつた網膜中心動脈(central retinal artery,CRAと便宜上記す)の白線化などの著しい眼底異常を記し,成人においても長期にわたる高濃度酸素療法は不可逆的眼障害をきたすおそれがあることを指摘したい。
著者
荒木 勉 藤野 陽 田口 富雄 瀧本 弘明 東福 要平 清水 賢巳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.135-141, 1996-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

好酸球増多を伴う急性心膜心筋炎を発症し,ステロイド投与が有効であった若年女性例を経験したので報告する.症例は20歳女性,主訴は胸部圧迫感.入院時軽度の好酸球増多(567/mm3)と心電図で右軸偏位・低電位差・陰性T波を,胸部X線で心拡大と両側の胸水貯留を,心エコー図で心のう水貯留と心筋のび漫性の肥厚と壁運動の低下を,右心カテーテル検査で肺毛細管楔入圧(25mmHg)・右室拡張末期圧(24mmHg)・右房圧(22mmHg)の著明な上昇と心係数(1.9l/分/m2)の著明な低下,およびdip and plateau様の右室心内圧波形を認め,急性心膜心筋炎と診断した.ドブタミンとフロセミドの投与により血行動態は改善したが,心エコー図所見は不変で,好酸球増多がさらに進行(1,215/mm3)したことより,心膜心筋炎の原因に何らかのアレルギー機序が関係しているものと推定し,ステロイド投与を開始した.投与開始後,末梢血の好酸球は速やかに消失し,約3週間の経過で心電図・胸部X線・心エコー図所見ともにほぼ正常化した.好酸球増多および心筋心膜炎の原因を特定することはできなかったが,臨床上心のう水貯留(心膜炎)を主体として心タンポナーデに近い血行動態を示し,治療上ステロイド投与が有効であった点で,好酸球増多と心疾患の関連を考察する上での貴重な症例と考え報告した.
著者
中島 昭勝 東福 要平
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.1475-1481, 1994

血液透析患者において, 致死的不整脈をきたしうる心電図QTcの延長について検討した. 対象および方法: 対象は, 維持血液透析患者のうち, 3か月以上症状が安定している維持透析群32名 (男24名, 女8名) で, 血液透析前後で, 心電図QTc, 血液ガス分析, 血清電解質, 血中イオン化カルシウム (Ca<sup>++</sup>), 血中HANP, 体重, 血圧などを測定し, またこれらの患者と年齢, 男女比をマッチさせた正常対照群32名 (検診受診者) について心電図QTcを測定した. 結果: 透析前で維持透析群のQTcは, 0.439±0.025secと正常対照群の0.396±0.021secと比較し, 有意に延長していた (p<0.01). 維持透析群の中で0.438sec (正常対照群の平均値+2標準偏差) 以上のものが15名 (46.9%) であり, これをA群, 0.438sec未満のものをB群として, 両群を比較すると, 血清Caは, A群で8.8±1.0mg/d<i>l</i>, B群で9.8±1.2mg/d<i>l</i>と有意差が認められ (p<0.05), 他の血清電解質, 血中Ca<sup>++</sup>, 血液ガス分析, 血中HANPには, 両群間で有意差は認められなかった. QTcの透析前後の変化量 (<i>Δ</i>QTc) は, 血清Ca, 血中Ca<sup>++</sup>, HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>の各変化量と相関したが, その他のデータとは相関しなかった. 透析後, A群において血清Caは平均9.6mg/d<i>l</i>まで上昇したが, QTcは平均0.450secと延長したままで, 短縮傾向は認められなかった. 結論: 慢性透析患者では, 透析前すでにQTcは延長を示す例が約半数を占め, 1回の血液透析で血清Caが正常化しても, QTcの延長の改善は認められなかった. そのQTcの延長については, 血清Ca以外に血液透析に伴う種々の原因による心筋自体の障害, 自律神経系の異常などについても検討する必要があると考えられた.