著者
関 智行 新井 冨生 山口 雅庸 石川 文隆 齊藤 美香 大平 真理子 平野 浩彦 石山 直欣
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.315-321, 2010

ビスフォスフォネート (以下BPs) 製剤は骨代謝異常疾患に対して有効であり, その使用症例が近年増加しているが, それにともないBPs製剤に関連した顎骨壊死 (Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw, 以下BRONJ) の報告も増加している。今回, われわれは多発性骨髄腫に対してBPs静注剤の投与を受けた患者で, 上下顎骨壊死をきたした剖検例を経験し, 口腔露出部顎骨と骨が露出していない下顎骨を病理組織学的に比較検討を行ったので報告する。<BR>症例は77歳男性。初診時, 上顎右側第二小臼歯部に骨露出を認めた。多発性骨髄腫に対してBPs静注剤の長期投与の既往があることからBPs関連顎骨壊死を考慮し, 抗菌薬投与と局所洗浄を行った。また, 多発性骨髄腫による骨症状がないことからBPsを中止した。初診3カ月後, 下顎右側犬歯から第二小臼歯部に新たな骨露出を認めた。初診6カ月後には上顎右側第一小臼歯が自然脱落した。初診8カ月後に間質性肺炎悪化にともなう呼吸不全で死亡した。剖検が行われ, 口腔に露出していた上下顎骨は病理組織学的に骨壊死を呈していた。また, 粘膜に被覆され骨が露出していない右側第三大臼歯頬側の下顎骨を検体として採取し病理組織学的に検索した結果, 骨小腔には骨細胞が散見され, 骨髄組織に慢性炎症像が認められた。<BR>BRONJにおいては, 顎骨壊死が露出領域を超えて顎骨未露出領域まで拡大している可能性が示唆された。
著者
湖山 昌男 石山 直欣 渡邊 郁馬 佐藤 亨 腰原 好 牧野 正義
出版者
Japanese Society of Gerodontology
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.126-131, 1992

従来咀嚼能力の測定には様々なものが考案されている。しかしこれらは日常の食生活を考慮した測定方法とは必ずしもいえない。老年者に対する歯科医療の現場では「食べたいものが噛めない」という患者の声は切実であり, 日常の食事における食品と対応した咀嚼能力の判定が必要であると考えられる。そこで今回われわれは, 義歯に対して付着性が低く, 安心して食べることができ, 診療室内で簡単に咀嚼能力を判定できるものとしてゼリーを用い, 日常食品の物性に対応した試料の作製を試みた (G-1ゼリー) 。<BR>試料のゲル化剤には寒天とゼラチンを使用した。外形は13mm角の立方体であり, 一口では飲み込めない大きさを考慮した。物性については柳沢らの「咀嚼筋活動量による食物分類」を用いた。10のランクに分けられた食品群のうち, 実用的な最低ランク2と最高ランク10, そして中間の3つのランクを選び, 5段階の試料を作製した。味については, 一般的に好き嫌いが少ないと思われる柑橘系にした。この試料に対して健常成人10人による官能試験と当科外来患者24人に臨床試験を行った。その結果今回の試料が食品と対応し, 臨床的に簡便で有効な試料であることが確認された。