著者
橘 ゆかり 三浦 加代子 石崎 千賀 川原崎 淑子 青山 佐喜子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.189, 2010

【<B>目的</B>】伝統的な祝いや祭りの行事では、風土に根ざした食べ物が先人の知恵で作られ、行事食として日本各地で様々な形で伝承されてきた。しかし、生活様式が変化すると共に稲作にかかわる行事そのものが廃れてきた。家庭で行事食を作る機会が減り、伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあると考えられる。今回の調査は日本調理科学会の平成21・22年度の特別研究の一環として、行事食の認知状況や摂食状況などを調査することにより、和歌山県の調理文化の現状を把握し、行事食の伝承の状況を明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】平成21・22年度の日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行った。近畿に在住する大学・短期大学の学生およびその親に調査への協力を依頼した。和歌山県の調査対象者は調査に同意した学生およびその親の中で、和歌山県に10年以上在住している人を対象とした。今回は調査項目の中で、大みそか、正月および人日(七草)における行事食の現状を分析した。<BR>【<B>結果および考察</B>】学生と親世代の行事食の喫食経験や認知度を比較した。「屠蘇」、「昆布巻き」、「田作り」「煮しめ」「なます」や「七草粥」などの喫食経験が親子世代間で異なる傾向が認められた。親子世代間で喫食経験に差があまり認められなかった行事食は、正月の「雑煮」「黒豆」、大みそかの「年越しそば」などであった。喫食状況においても同様の傾向が認められた。さらに同一家庭内での学生と親の喫食状況を比較した。家庭内で同じ行事食が供食されていると考えられるが、親子間で喫食状況が異なる行事食が認められ、家庭内での行事食の伝承力が低下していることが推測された。