著者
稲葉 利敬 六角 久美子 板橋 直樹 井手野 順一 長坂 昌一郎 本多 一文 岡田 耕治 横山 水映 石川 三衛 齊藤 寿一 内潟 安子 岩本 安彦 石橋 俊
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.787-790, 2003-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
4

症例は69歳, 女性.1993年 (平成5年) 10月Graves病と診断されmethimazole (MMI) 投与を開始.1997年 (平成9年) 7月より夜間空腹感を自覚し, 低血糖症を指摘された.インスリン注射歴のないこと, 血中インスリンの異常高値, 高力価のインスリン抗体の存在からインスリン自己免疫症候群と診断.同年7月, 甲状腺機能低下を認めMMIは中止されたが, 低血糖症状が持続し2000年 (平成12年) 6月入院.75gOGTTは糖尿病型, 入院食摂取下の血糖日内変動では低血糖を認めず, 絶食試験で19時間後に低血糖を認めた.HLA-DRB1*0406を認めた.Scatchard解析の結果, 本症例のインスリン抗体はポリクローナルで, そのhigh-affinity siteのK1は2.35×108M-1, b1は1.32×10-8Mと計算された.本症例の血清は, 加えたヒトインスリンに対しての本症候群に特徴的とされる低親和性, 高結合能に比して高親和性でかつ低結合能を示した.本症候群では, 誘因となる薬物の開始後早期に発症し, 薬物中止後数カ月以内に低血糖発作が自然緩解する例が多いとされるが, 本例は, MMI開始4年後に診断され中止後も症状が持続する, 特異な臨床経過を示した症例であった.
著者
谷田貝 利光 六角 久美子 草鹿 育代 中村 友厚 長坂 昌一郎 石川 三衛 斉藤 寿一 石橋 俊
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.325-328, 2002-05-30
被引用文献数
4

糖尿病の既往歴が無く, 分娩7日後に糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) で発症した1型糖尿病の症例を経験した. 症例は29歳女性, 2000年3月10日当院で第1子男児を満期産で正常分娩した. 14日から上気道炎症状を認め, 翌15日に尿糖陽性を指摘された. 17日朝から口渇, 多尿, 悪心, 嘔吐が出現し悪化したため入院. 血糖値835mg/d<I>l</I>, 尿ケトン体強陽性, 代謝性アシドーシスからDKAと診断された. HbA<SUB>1c</SUB>は67%と軽度上昇にとどまっていた. 血中・尿中CPRは低値で内因性インスリン分泌能は著しく低下しており, 経過中回復を認めなかった. 入院時Lipase, Elastase 1の軽度上昇を認め, また抗GAD抗体, 抗IA-2抗体などの自己抗体は陰性だった. 本症例を含めて過去に報告された分娩後にDKAで発症した1型糖尿病6例の臨床像は, 劇症1型糖尿病にほぼ合致しており, その成因を考える上で重要と思われた.