- 著者
-
福井 孝太郎
石川 優馬
大野 圭介
榊原 菜々
高西 淳夫
誉田 雅彰
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.265, pp.19-24, 2008-10-16
- 参考文献数
- 6
人間の発声器官の3次元機械モデルの確立を目的としたWaseda Talkerシリーズの開発において,音声生成の明瞭性の向上を目的とした新型発話ロボットWT-7R(Waseda Talker No.7 Refined)を開発した.これまでの3次元発話ロボットWT-7においては,舌部をリンク機構で構築し,その上に熱可塑性エラストマー・セプトン製のカバーをかぶせることで声道としていた.しかし,この方法ではカバーが十分な厚みが無いため音漏れが生じ,共鳴特性に問題があるため,結果として,生成される母音が不明瞭になってしまっていた.この問題を解決するために,新型ロボットでは,リンクが駆動する舌内部の空間を液体で満たすことにより,共鳴特性の向上を目指すこととした.実験による検討の結果,セプトンへのダメージが少ないという利点から,封入液体にはエチレングリコールを選定し,可動部ではオイルシールや液体ガスケットによって液漏れを防いでいる.また,WT-7においては舌のリンク自体の可動域が不足していたため改良を行い,口唇部においては断面積変化が不十分であったため,確実に必要な断面積変化を実現できる機構を採用した.これらの改良により,発話ロボットによって生成される母音の明瞭性が向上し,スペクトル解析で計測したフォルマントのバンド幅が狭くなっていることが確認できた.