著者
吾妻 崇 太田 陽子 石川 元彦 谷口 薫
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.169-176, 2005-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
25
被引用文献数
3 9 2

御前崎周辺には,御前崎段丘(高度48~25m,三崎面相当の海成段丘)と4段の完新世海成段丘(高度15m以下)が分布する.御前崎段丘は,全体として西-南西に向かって傾動し,小規模な活断層,撓曲崖および背斜構造を伴う.御前崎段丘を開析する水系の分布形態および駿河湾側の海食崖上にみられる風隙の存在は,旧汀線が北西に位置することと不調和で,段丘形成後の変形を示している.御前崎段丘上にみられる東西方向に延びる低崖は,更新世段丘上に残された地震性隆起の記録である可能性がある.完新世海成段丘は4段に区分され,I面は後氷期海進最盛期直後,II面は約3,500cal BP以前,III面は2,150cal BP以前にそれぞれ離水したと考えられる.I面の内縁高度は14mに達するが,既存のボーリングコア解析から推定される海成層の上限高度は約3mにすぎない.これらの段丘の形成過程を,海溝型の活動間隔の短い地震による隆起と,地震間における沈降および活動間隔の長い地震による大きな隆起との和として解釈した.