著者
大槻 憲一 渡辺 明彦 山本 克彦 石川 博文 大山 孝雄 山田 高嗣
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.522-526, 2004-02-25
被引用文献数
3 1

症例は59歳,女性.平成13年11月,下痢を主訴に近医を受診したところ,右側腹部腫瘤を指摘され当院に紹介された.当院受診時,右側腹部に弾性軟,小児頭大の腫瘤を触知した.腹部CTでは右後腹膜腔に12×7 cmのlow density massとして描出され,注腸造影検査において,上行結腸は著名に左側に圧排されていた.後腹膜漿液性嚢胞の診断のもと,腫瘍摘出術を施行した.腫瘤は非常に薄い嚢胞壁を有し,その内容物は無色透明の液体であった.内溶液のCA19-9, CEA値はそれぞれ10,000U/ml以上, 344.5ng/mlと高値を示したが,細胞診は陰性であり,嚢胞壁にも悪性所見は認めなかった.後腹膜嚢腫は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
横山 貴司 石川 博文 坂本 千尋 渡辺 明彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2612-2617, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻を5例経験した.平均年齢68.4歳,男性3例女性2例で,5例中3例は他院にて大腸癌あるいは膀胱癌と診断され,1例は人工肛門を造設されていた.主訴は4例で糞尿あるいは気尿を認め,1例は腹痛,腹部膨満感のみであった.5例中3例において,注腸検査,膀胱鏡,MRIにより結腸膀胱瘻が描出可能であった.全例で大腸憩室症の既往があったこと,画像上,腫瘤形成を認めないことから,憩室炎に伴う瘻孔と診断し,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.術後経過は全例良好であった.結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は比較的稀な疾患であり,自験例5例とともに15年間の報告例を集計し,以前の本邦報告例と比較し,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
向川 智英 渡辺 明彦 西口 由希子 中谷 充宏 松阪 正訓 高 済峯 石川 博文
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.337-343, 2014-06-01 (Released:2014-06-07)
参考文献数
15

症例は36歳の女性で,左下腹部腫瘤を主訴に当院を受診し,骨盤MRIで後腹膜腫瘍と診断された.SCC抗原が4.7 ng/mlと高値であったが,膀胱,尿管,子宮,卵巣に異常を認めなかった.手術所見で腫瘍は小骨盤腔左側を占居する囊胞性腫瘤で,一部に充実成分が存在し左内腸骨動静脈と左閉鎖神経を巻き込んでいたが,これらを温存して腫瘤を摘出した.充実成分は左閉鎖リンパ節の集塊で,左総腸骨,左外腸骨動脈沿いにもリンパ節腫大を認めたため左側方リンパ節郭清を行った.囊胞性腫瘤の病理組織学的診断は扁平上皮癌で,郭清したリンパ節も全て同じ組織型と診断された.囊胞性腫瘤を含め全てが転移で原発巣が潜在している可能性を考慮し,FDG-PETによる全身検索を行ったが明らかな原発巣を指摘できなかった.したがって,本症例は後腹膜の囊胞性腫瘤を原発巣としリンパ節転移を伴った扁平上皮癌と考えられた.