著者
石川 正恒
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1184-1186, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

髄液は脳室内の脈絡叢で産生され,一方向に流れて,最終的には上矢状洞のクモ膜顆粒から吸収されると考えられてきたが,近年,この髄液が一方向に流れるBulk flow説に対する疑問が出されるようになり,産生・吸収・循環の面から再考を迫られている.髄液産生吸収の主たる部位が脳毛細血管とする説は脳室やくも膜下腔の髄液の由来をあらためて考えなければならない可能性をもたらしているが,新たな視点で髄液をみる機会でもあり,髄液研究の更なる進展が期待される.
著者
石川 正恒
出版者
(財)田附興風会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1) 脳エネルギー代謝への影響ラットを用いた実験で、single spredding depresion(SD)の負荷では5分以内に刺激局所の大脳皮質にalkalosisを認め、続いて同側大脳皮質全域に広がるacidosisの波が観察された。これらは約20分で回復した。ATPはacidosisの発生回復と一致して枯渇回復を示した。120分間の繰り返しSD刺激ではacidosisとATP枯渇が認められたが、45分以後はこの変化が減弱し、60分以後はほとんどみられなくなった。その後にSDの負荷をおこなっても6時間まではacidosisとAPT枯渇は観察されなかった。2) アポトーシスとの関連SDをあらかじめ負荷しておくことにより、脳虚血負荷による大脳皮質での神経細胞の脱落が抑制された。ネクローシスの割合は負荷群と非負荷群で有意差は認めなかった。3) カルシウムホメオスターシスSD負荷によるカルシウムホメオスターシスの変化は組織化学的には認められなかった。以上より、SDは脳虚血による大脳皮質神経細胞の脱落を防止し、このSDによる虚血耐性はアポトーシス防止によるもとと考えられた。