著者
石川 真一 高橋 和雄 吉井 弘昭
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.11-24, 2003
参考文献数
33
被引用文献数
8

群馬県内利根川中流域における外来植物オオブタクサ(Ambrosia trifida)の分布状況を調査した結果,県南端に位置する明和町から,県北端の水上町(源流から約30km下流)の範囲において,大きな個体群が30地点で確認され,このうち最大のものは約687万個体からなり,年間約17億の種子を生産していると推定された.またこの30地点はすべて工事現場や採石場周辺などの,人為的撹乱地であった.温度-発芽反応実験の結果,オオブタクサは寒冷地に分布すると,より低温で発芽し,高温では休眠するようになる可能性が示唆された.水上町の個体群と群馬県南部の伊勢崎市の個体群において残存率調査と生長解析を行った結果,オオブタクサは北の低温環境下においても南部と同等かそれ以上の相対生長速度を有していたが,エマージェンス時期が遅くて生育期間が短いため,個体乾燥重量は小さくなった.しかし水上町では,伊勢崎市に比べて個体乾燥重量あたりの種子生産数と残存率および個体群密度が高いため,単位面積あたりでは伊勢崎市より多くの種子を生産していた.これらの結果から,オオブタクサが今後も低温環境下において勢力を拡大する危険性があるとことが示唆され,拡大防止の一方策として,河川周辺における人為的撹乱の低減と,種子を含む土壌が工事車両によって移動することを防止する必要性が提言された.