著者
川村 光 青山 和司 富安 啓輔 鳴海 康雄 高阪 勇輔 南部 雄亮 石渡 晋太郎
出版者
公益財団法人豊田理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

Z2渦候補物質として、2つの3角格子磁性体NiGa2S4とNaCrO2に注力した研究を行った。NiGa2S4では、偏極中性子散乱によりスピンの異方性がT* = 8.5 Kで増大する臨界的異常を示すことが分かっている。30年度には、理論・シミュレーションとの比較により、この異常がZ2渦機構で説明できることを明らかにした。現在、実験と理論の結果をまとめた論文作成を進めている。また誘電率測定により、T*直下でhump的な異常を新たに見出した。NaCrO2では、良質な粉末試料の大量合成法を確立し微小単結晶が合成された。磁化率、放射光共鳴X線回折の観測を行うとともに、中性子への展開を開始した。理論面からは、3角格子反強磁性ハイゼンベルグモデルにおいて、スピン伝導率がZ2渦転移温度で発散的異常を示すことを見出し、KT転移系との比較などを通し、トポロジカル転移とスピン伝導の相関に関する知見を得た。対称的スカーミオン格子候補物質として強磁場中NiGa2S4と3角格子金属磁性体EuCuSbに注力した研究を行った。NiGa2S4の強磁場磁気相図を完成させるべく、強磁場磁化、比熱、磁気分光測定を行った。EuCuSbでは、磁気輸送特性を測定した結果、巨大なトポロジカルホール効果が観測され、トポロジカルな磁気構造の発現が示唆された。また、関連するフラストレーション磁性体MnSc2S4、Mn(OH)2などの強磁場磁化測定を行い、多段の磁場誘起相転移の存在を確認した。3角格子以外の系も視野に入れているが、30年度は次近接相互作用でフラストレートしたハニカム格子系に対する理論計算・数値シミュレーションを進め、磁場中で「メロン/反メロン格子」「ripple」状態等の新奇なスピンテクスチャーと磁気秩序相を理論的に見出した。
著者
石渡 晋太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

立方晶ペロブスカイトSrFeO3は、金属的伝導性とらせん磁性を併せもつ希有な酸化物として古くから知られていたが、単純ならせん磁性では説明できない磁気輸送特性を示すことから、スカーミオンなどのトポロジカルに新しいらせん磁性相の存在が期待されていた。本研究では、フローティングゾーン法と高圧合成法を組み合わせることで、SrFeO3およびその周辺物質の大型単結晶育成に世界で初めて成功し、磁化・抵抗・ホール抵抗測定から多彩な新奇らせん磁性相を含む磁気相図を確立した。さらに磁場中における偏極中性子回折実験を行うことで、この系が4つの磁気伝搬ベクトルを有するmulti-Qらせん磁性体であることを見いだした。