著者
石田 信平
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.2227-2285, 2007-01

研究ノート(Note)営業秘密は退職後の労働者による競争会社への漏洩によってその財産的価値が滅失する場合がある。そのため、多くの企業が退職後の競業避止特約を締結することによって、その漏洩を防止しようとしている。しかしながら問題は、こうした退職後の競業避止特約が労働者の職業選択の自由と衝突する点にある。 本稿では、以上のような営業秘密保護と退職後の競業規制について、アメリカの不可避的開示論の形成と展開を踏まえた検討を行った。ここで不可避的開示論とは、あるときは、わが国の不正競争防止法と類似する統一営業秘密法から直接競業差止という法的効果を導出する機能を果たし、あるときは、競業避止特約と秘密保持特約の限界を問う機能を果たす法理論であり、以上の問題に考察を加えるにあたって非常に示唆に富む議論を含んでいる。 本稿では、こうした不可避的開示論に関する裁判例、学説を分析し、日本の競業避止義務の課題と方向性を抽出することを試みたところ、労働者の競業避止義務には、労働者の背信性を軸とした「公正競争」の原理から要請されるものと、代償と軸とした「契約」の原理から要請されるものがあるという仮説を得た。わが国の裁判例は競業避止特約について明確な要件、効果が設定しているとは言いがたく、本稿では、この二つの原理によって、要件、効果を精緻化していくべきであるということを示唆した。
著者
石田 信平
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1941-2025, 2006-11

営業秘密は退職後の労働者による競争会社への漏洩によってその財産的価値が滅失する場合がある。そのため、多くの企業が退職後の競業避止特約を締結することによって、その漏洩を防止しようとしている。しかしながら問題は、こうした退職後の競業避止特約が労働者の職業選択の自由と衝突する点にある。 本稿では、以上のような営業秘密保護と退職後の競業規制について、アメリカの不可避的開示論の形成と展開を踏まえた検討を行った。ここで不可避的開示論とは、あるときは、わが国の不正競争防止法と類似する統一営業秘密法から直接競業差止という法的効果を導出する機能を果たし、あるときは、競業避止特約と秘密保持特約の限界を問う機能を果たす法理論であり、以上の問題に考察を加えるにあたって非常に示唆に富む議論を含んでいる。 本稿では、こうした不可避的開示論に関する裁判例、学説を分析し、日本の競業避止義務の課題と方向性を抽出することを試みたところ、労働者の競業避止義務には、労働者の背信性を軸とした「公正競争」の原理から要請されるものと、代償と軸とした「契約」の原理から要請されるものがあるという仮説を得た。わが国の裁判例は競業避止特約について明確な要件、効果が設定しているとは言いがたく、本稿では、この二つの原理によって、要件、効果を精緻化していくべきであるということを示唆した。
著者
石田信平
出版者
労働政策研究・研修機構
雑誌
日本労働研究雑誌
巻号頁・発行日
vol.2012年(11月), no.628, 2012-11
著者
石田 信平 イシダ シンペイ Ishida Shinpei
出版者
同志社法學會
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.267-351, 2006-11-30

営業秘密は退職後の労働者による競争会社への漏洩によってその財産的価値が滅失する場合がある。そのため、多くの企業が退職後の競業避止特約を締結することによって、その漏洩を防止しようとしている。しかしながら問題は、こうした退職後の競業避止特約が労働者の職業選択の自由と衝突する点にある。 本稿では、以上のような営業秘密保護と退職後の競業規制について、アメリカの不可避的開示論の形成と展開を踏まえた検討を行った。ここで不可避的開示論とは、あるときは、わが国の不正競争防止法と類似する統一営業秘密法から直接競業差止という法的効果を導出する機能を果たし、あるときは、競業避止特約と秘密保持特約の限界を問う機能を果たす法理論であり、以上の問題に考察を加えるにあたって非常に示唆に富む議論を含んでいる。 本稿では、こうした不可避的開示論に関する裁判例、学説を分析し、日本の競業避止義務の課題と方向性を抽出することを試みたところ、労働者の競業避止義務には、労働者の背信性を軸とした「公正競争」の原理から要請されるものと、代償と軸とした「契約」の原理から要請されるものがあるという仮説を得た。わが国の裁判例は競業避止特約について明確な要件、効果が設定しているとは言いがたく、本稿では、この二つの原理によって、要件、効果を精緻化していくべきであるということを示唆した。