著者
石田 博幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,日・タイの小・中学校の生徒の環境意識調査に続き,環境意識と向社会的行動との関連性へと進んできた。結果は,環境行動と向社会性行動には,弱い正の相関があることが証明された。ただ,環境教育の成果が出ている反面,教育で受けた知識と実際の行動の間に相違が出てきており,知識が行動に直結するようになるには少し時間が要るように思われる。3年間を通して何度かタイ教育省関係者およびタイ人共同研究者を招聘し,環境教育関連討論会を開き討論した。2年目の5月には日本環境教育学会で,7月には,WCCI国際学会で日・タイの児童の向社会性意識と環境意識の関係について発表した。また,メコン川環境破壊状況を調査し,共同研究者と討論し指導した。11月に愛知教育大学で開催された地域教育シンポジウムへタイの環境教育学者を招聘し講演してもらった。同じく11月にラチャパット大学(複数)を訪問し,研究交流について討論した。12月には,チェンライラチャパット大学の大学設立記念式典で招待され記念講演を行った。12月末におきたスマトラ沖地震はタイの児童の環境意識に大きな影響を与えたと推測される。その調査の準備のため3月に訪タイした。最終年度は,当県で開催された愛・地球博が,環境問題解決には重要であると考え,タイ人共同研究者を招聘し,研究してもらった。その成果は,彼らを通じてタイの環境教育に大きく寄与をする。さらに,スマトラ沖の地震・津波の児童・生徒の環境意識への影響の調査をした。結果は,タイの児童・生徒は,その甚大な被害にもかかわらず,宗教と科学に対する信頼を維持していることがわかった。世界中からの救援や科学鑑定が科学への信頼を増したと思われる。宗教心が薄く,なおかつ,科学への信頼が薄れてきている日本の子どもたちと比較し,注目すべき結果であり,今後,学界や社会へ発表して行く予定である。