著者
佐藤 恒久 倉田 まゆ子 石田 尚志 江橋 博 寺尾 保
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.183-193, 1985-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
15

長距離レースを想定した速度で, 全力走トレーニングを17日間連日実施した1名と, 運動強度: 2/3VO2max (150m/min, 勾配+3度) のトレッドミル20分走を10年間連日実施した1名の, 健康な男性非鍛練者の経時的心電図を解析した.その結果前者では, 運動開始後21日目には, 心室内変行伝導を伴った上室性期外収縮が頻発した.23日目には, 上室性期外収縮とともに, 洞性不整脈もみられた.44日目には, 洞性徐脈と心室内変行伝導を伴った上室性二段脈, 213日目でも, 上室性二段脈が持続した.一方後者では, 運動開始5年後初めて問入性心室性期外収縮が出現し, 9年後には心室性期外収縮の頻発を認めたが, 10年目には心室性期外収縮の散発をみるに過ぎなかった.すなわち, 過激な運動では, 短期間の運動でも長期にわたって病的不整脈が観察されたのに対し, 適度な運動では, 長期にわたる負荷でも治療を要する不整脈は全くみられなかった.