著者
寺尾 保 恩田 哲也 有賀 誠司
出版者
東海大学
雑誌
東海大学スポーツ医科学雑誌 (ISSN:09153659)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-27, 2000

The purpose of this study is to elucidate the energy metabolism in a simulation of the fifth section of the Hakone Ekiden(disrance of 20.7km)using a runner-motion-response-type treadmill in a laboratory. Five male runners aged 20.2±.6 years were asked to run at their desired speds on a programmable treadmill whose"slope-setting"was changed automatically every fifty meters. The runners watched a video of the acrual course during this experiment. We found a significant correlation between the slope every fifty meters and the mean step length(r=-0.695)and step frequency(r=0.646). The mean values of oxygen uptake and respiratory exchange ratio of the five runners were 59.83±5.42(range 56.35-62.55)ml/kg/min and 0.99±0.05(range 0.97-1.01), respectively. The total energy expenditure and energy expenditure deduced from carbohydrates and lipids in this fifth section were 1632±58 kcal, 1502±120 kcal, and 130±96 kcal, respectively. In the case of an upward slope, we observed a significant correlation between energy expenditure(kcal/kg)for the five runners and mean step length(r=-0.942), mean step frequency(r=0.918), and running time(r=0.982). These results indicate that about 90% of the total energy used in the fifth section is supplied by the carbohydrate component and showed the high intersity of exercise during this section. In conclusion, our results for the upward slope showed that good long-distance runners use a longer step length, and thereby save energy and thus realize an improved running economy.
著者
寺尾 保
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、短期集中型高地トレーニングに焦点を絞って、末梢血液循環の動態、動脈硬化度に及ぼす効果について明らかにするとともに、自律神経系(交感神経及び副交感神経のバランス)の変化からも検討した。その結果、中高年者に対する標高1500m前後に相当する低圧低酸素環境下における2日間の歩行運動は、運動終了後の翌朝において、自律神経活動の適切な反応(健常型)がみられ、末梢血液循環を一時的に改善することが示唆された。週末を利用した「高地ウォーキング」は、定期的に継続すると安静時の自律神経系及び末梢循環を比較的早期に改善することが期待できると示唆された。
著者
佐藤 恒久 倉田 まゆ子 石田 尚志 江橋 博 寺尾 保
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.183-193, 1985-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
15

長距離レースを想定した速度で, 全力走トレーニングを17日間連日実施した1名と, 運動強度: 2/3VO2max (150m/min, 勾配+3度) のトレッドミル20分走を10年間連日実施した1名の, 健康な男性非鍛練者の経時的心電図を解析した.その結果前者では, 運動開始後21日目には, 心室内変行伝導を伴った上室性期外収縮が頻発した.23日目には, 上室性期外収縮とともに, 洞性不整脈もみられた.44日目には, 洞性徐脈と心室内変行伝導を伴った上室性二段脈, 213日目でも, 上室性二段脈が持続した.一方後者では, 運動開始5年後初めて問入性心室性期外収縮が出現し, 9年後には心室性期外収縮の頻発を認めたが, 10年目には心室性期外収縮の散発をみるに過ぎなかった.すなわち, 過激な運動では, 短期間の運動でも長期にわたって病的不整脈が観察されたのに対し, 適度な運動では, 長期にわたる負荷でも治療を要する不整脈は全くみられなかった.
著者
寺尾 保 三好 基治 成澤 三雄 吉岡 利忠 中野 昭一
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.235-244, 1984-10-01
被引用文献数
1

長期間にわたって持久的トレーニングを行ってきている長距離ランナーと,日常,運動習慣を有していない者を被験者として,それぞれの安静時,運動中,運動終了後のリポ蛋白代謝について検討した.被験者には,毎週150km以上走行している大学陸上部長距離ランナー5名,ならびに非運動群として文学部学生5名の計10名を選んだ.なお,これらの被験者は,すべて肥満,高脂血症,喫煙,加齢,疾病などを有していない.実験方法は,60%V^^・o_2maxの運動強度で30分間固定負荷法による自転車エルゴメーター運動を行わせた.その結果を示すと次のごとくである.1)安静時における長距離ランナー群は,非運動群に比べて,VLDL中のCho.,TG,PLが低く1%水準で有意な差を認め,一方,HDL中のCho.,PLが逆に増加し,5%水準で有意の差を認めた.2)安静時におけるVLDL-TGとHDL-Cho.,VLDL-TGとHDL-PLの関係は、それぞれ1%,0.1%水準で有意な負の相関を認めた.HDL-Cho.とHDL-PLの関係は,0.1%水準で有意な正の相関を認めた.3)最大下運動を行った場合,長距離ランナー群では,運動開始とともにVLDL中のTGが低下し,運動終了直後約12%の減少を示した.しかし,非運動群では,ほとんど変化がみられず,長距離ランナー群とは異なっていた.また,両群ともしDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかった.以上の成績から,運動に対応するエネルギー産生に際し,長距離ランナー群は,非運動群に比較して脂質を利用する割合が多く,今回行った最大下運動においても運動中VLDL中のTGが分解してエネルギーを供給していたことが考えられた.しかし,LDLおよびHDL中のPL,Cho.に変化がみられなかったことから、一過性の運動においてはVLDL中のCho.,PLが他のリポ蛋白へ転送される可能性の少ないことを示していた.しかし,安静時において両群間を比較すると,VLDLとHDL中の脂質組成に有意な差や相関が認められたことから,長期間にわたる持久的な運動の積み重ねによって体内リポ蛋白代謝過程に微妙な変化をきたさせ,VLDL中のPL,Cho.が徐々にHDLへ転送されていることが考えられた.
著者
有賀 誠司 寺尾 保 恩田 哲也
出版者
東海大学
雑誌
東海大学スポーツ医科学雑誌 (ISSN:09153659)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.24-33, 2001

The purpose of the present study was to determine the effects of a resistance training program in triathletes. Eight healthy university competitive men's triatheletes who had no experience of the resistance training were assigned to either the resistance training group(TRAINING : N=4)or the regular training group(CONTROL : N=4). The resistance training program that Johnston et al.(1995)used for women long-distance runners was carried out three times a week, for ten weeks in TRAINING. Body weight, body fat, muscle cross-sectional area of thigh, squat 1RM, leg press power, isokinetic strength, and the incremental exercise using treadmill were examined before and after the training. At the same time, VO_2max and blood lactate concentration were also measured. The main results were as follows; 1) In regard to body weight, body fat, and muscle cross-sectional area of the thigh, no significant changes were found in either the TRAINING a CONTROL groups. 2) In the case of squat 1RM and leg press power, a significant increase was noted in the TRAINING group (p<0.01,p<0.05). There were no significant changes in isokinetic strength for either the TRAINING or CONTROL group. 3) There was no significant changes in VO_2max/BW in either groups. However, there was a significant increase in blood lactate concentration in the TRAINING group (p<0.05). 4) There was a positive correlation between the percentage change in leg press power/squat 1RM and in blood lactate concentration (p<0.05)in both groups. From these results we suggest that the resistance training program in triathletes was useful to improve the muscle strength and power without muscle hypertrophy, and to enhance during endurance high intensity exercise.
著者
寺尾 保
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、肥満者を対象に、低圧環境下の歩行運動に対する運動終了後のエネルギー消費量(実験1)、さらに、12週間のトレーニング期間で歩行運動を週3回の頻度で、1回が高地(低圧低酸素環境)、残り2回が平地(常圧環境、走者応答型トレッドミル使用)の併用によるトレーニングの有効性(実験2)等を検討した。その結果、実験1では、1.低圧環境下の運動終了30分、60分後のエネルギー消費量は、常圧環境後の値に比べて,有意な高値を示した(p<0.05)。2.翌朝の安静時代謝量は、低圧環境後の方が非運動時の値に比べて、有意な増加を示した(p<0.01)。安静時の脂肪からのエネルギー消費量は、低圧環境後の方が常圧環境後に比較して、有意な増加を示した(p<0.01)。実験2では、1.トレーニング前後の体重は、実験群と対照群(週3回、常圧環境下の歩行運動)とも、有意な低下を示した(p<0.01、p<0.05)。トレーニング前後の平均値の差では、実験群が対照群に比して、大きな傾向を示した。2.体脂肪量は、両群とも有意な低下を示した(p<0.05)が、平均値の差では実験群が対照群に比して、大きな傾向を示した。3.トレーニング前後の安静時代謝量は、実験群が有意な増加を示した(p<0.05)。4.安静時の脂肪からのエネルギー消費量は、両群とも有意な増加を示した(p<0.01、p<0.05)が平均値の差では、実験群が対照群に比べて、大きな傾向を示した。以上、本研究の成績から、低圧環境下の歩行運動は、運動後、長時間にわたって脂質代謝を亢進させ、エネルギー消費量を高める可能性のあること、さらに、トレーニング頻度を週3回とした場合、1回の高地と2回の平地による併用の歩行運動が単に平地の歩行運動に比べて、長期間、継続することで安静時代謝量の亢進と脂質代謝の改善が行われ、より効果的な減量ができる可能性のあることが示唆された。これらの観点からも本トレーニングシステムは、肥満の有効な運動療法の1つになると考えられる。