- 著者
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石黒 圭応
阿部 薫
近藤 優
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2008, pp.E3P2187, 2009
【目的】<BR>「身体の前進は,立脚側下肢の可動性に依存する.身体重量が足関節に載り,力は床に向かう.身体は全身の安定性を保ちながら,この力の方向を変えることで前進する.」1)このように歩行時の足関節は荷重された下向きの力を関節角度の変化で前向きの力に変換する.幅広い年齢層の女性に使用されているハイヒールは,そのヒール高により足関節に対して様々な影響を与えていると考えられる.本研究の目的は,ヒール高の違いによって歩行時の足関節の関節角度に与える影響を明らかにすることであった.<BR>【仮説】<BR> ヒールの高さが増加するにしたがって,踵接地時から足趾離地時(立脚期全般)にわたり,足関節の底屈角度が増加し,それに伴い足関節の可動範囲が減少するとした.<BR>【方法】<BR>1.対象<BR>インフォームドコンセントの得られた健常女性11名(年齢20.8±1.2歳,身長158.1±4.5cm,体重50.6±4.3kg,足長23.5~24.0cm)とした.被験者はいずれもハイヒール靴経験者であった.<BR>2.条件<BR>1)測定機器:<BR>赤外線カメラ9台を含む三次元動作解析装置(VICON MX,Oxford Metrics 社製),床反力計(OR6-6-2000,AMTI 社製)6台を用いた.<BR>2)使用靴:<BR>ヒールがないヒール高0.0cm靴,ヒール高3.5cmのローヒール靴,ヒール高6.0cmの中ヒール靴,ヒール高8.5cmのハイヒール靴の4種を設定した(図1).3.5~8.5cmヒール靴のトップリフト(ヒール接地部)の形状を直径1cmの円形に加工して形状を同一とした.<BR>3)測定条件:<BR>裸足,およびヒール高0.0cm,3.5cm,6.0cm,8.5cmの靴着用し,各々4回歩行させた.全条件とも靴は裸足で使用した.測定に先立ち,被験者には各靴を着用して歩行練習を十分に行なわせ,歩行速度はComfortable Gaitにて行った.<BR>4)測定項目:<BR>4回の歩行のうち最も安定した代表値1回を用い,歩行中の右下肢立脚期を解析区間とした.右足関節関の関節角度について,踵接地時,立脚中期時,足趾離地時,最大背屈値,足関節可動範囲を各歩行の間で比較した.<BR>【結果】<BR> ヒールの高さが増加するにしたがい,立脚期全般にわたって足関節の底屈角度が増加し,背屈角度は減少することがわかった.また6.0~8.5cmのヒール高になると足関節可動範囲が減少し,標準偏差が大きくなることが観察された.<BR>【考察】<BR>足関節可動範囲が減少することについては,足関節は最も下方に位置する関節であり,上位関節による代償動作が出現したと考えられた.またデータのバラツキについては,被験者によってヒール靴による歩行の習熟度の差も影響しているものと思われた.