著者
都築 知香枝 石黒 彩子 浅野 みどり 三浦 清世美 山田 知子 奈良間 美保
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.25-31, 2006-03-20 (Released:2017-03-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1

目的:(1)AD児をもつ母親の生活困難度,育児ストレスについて非AD児の母親との比較を行なう。(2)ADの疾患特性,生活困難度が,育児ストレスにどのように関連しているかを明らかにする。方法:2〜6歳のAD児の母親と非AD児の母親を対象に,属性,生活困難度,Parenting Stress Index(PSI)の質問紙調査を実施した。年齢について1対1対応でペアマッチングさせ,AD群,対照群ともに121組を解析対象とした。実施に際し,学内の研究委員会の倫理審査で承認を得た。結果:1)AD児の母親と対照群での育児ストレス総得点の比較において,有意差はみられなかった。2)AD児の母親は対照群に比較して,子どもに問題を感じていた。3)重症である児の母親ほど,子どもの機嫌の悪さや子どもに問題を感じていた。4)合併症の有無と育児ストレスには相関がみられなかった。5)育児ストレスと生活困難度の間には有意な相関が見られた。
著者
浅野 みどり 三浦 清世美 石黒 彩子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.6-13, 1999
参考文献数
16
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎の乳幼児(生後6ヵ月〜4歳未満)をもつ母親の育児困難感の現状を明らかにする目的で、26名の母親を対象に日々の育児で「困難である」と感じることについて、面接ガイドを用いた半構成面接を行った。母親全員から抽出された「困難感」は137件で、宮本の困難感覚の4類型に分類した結果、看護上問題になりやすい悲観的な困難感は、「不全感」15件と「行き詰まり感」19件で困難感全体の25%を占めた。「不全感」では、一生懸命努力しているのに報われないと理想と現実のギャップに怒りを抱え、「行き詰まり感」では、症状コントロールに有効な対処法がなく疲れ切っていた。一方、「適応感」は18名の母親から55件が抽出された。「前向きな考え方・楽観的な性格」「家族ぐるみ」「自分にあったケアをみつける」「優先順位を決める」などの行動特性に関連していると考えられた。
著者
石黒 彩 磨田 百合子 井上 まり子 矢野 栄二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.582-592, 2020-09-15 (Released:2020-10-10)
参考文献数
28

目的 人々が健康に安心して暮らせる地域づくりには,医療・保健・福祉等の直接的サービスだけでなく,住民の自助・共助を推進する社会関係資本の強化が重要である。その方法として,地域にある社会資源の調整やネットワーク形成を通し地域を自立活性化させるコーディネーターの機能が注目されているが,コーディネートの具体的な方法は明確化されていない。本研究では,東日本大震災の被害を受け住民の抱える生活課題が複雑化した被災地にて,地域づくりに従事する地域福祉コーディネーター(Community Social Coordinator, CSC)を対象に質的研究を行い,地域への介入プロセスを明らかにする。方法 対象者は,宮城県A市で震災後の地域づくりのために配置されたCSC,10人とした。40~90分の半構造化面接を個別に行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した。結果 CSCによる地域への介入プロセスには,《地域の中で関係を構築する》,《地域をアセスメントする》,《地域へ働きかける》の3段階があった。地域のアセスメントでは,〈地域の課題や強みを見定める〉というように地域課題だけでなく地域の資源となりうる強みを見極めていたが,この際〈対象分野を限定しない〉ようにしていた。地域への働きかけでは,〈CSC自らが地域に働きかける〉だけでなく〈住民の主体性を支援する〉ことや〈住民と資源をつなぐ〉こともCSCは行い,〈地域の課題解決をはかる〉ことへ進んでいた。また〈地域と協力する〉ことや〈他の支援者と協力する〉ことにより,地域への働きかけが促進されていた。結論 本研究の結果から,CSCによる地域への介入プロセスには,地域の中での関係構築・地域のアセスメント・地域への働きかけの3段階があることが示された。対象分野を限定せずアセスメントした地域の課題や強みをもとに,地域や他の支援者とも協力しながら地域へ働きかけており,その際住民を主体として考えコーディネートが進められていることが明らかになった。