- 著者
-
椎 崇
黒田 明平
社本 典子
三巻 祥浩
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.1, pp.72-80, 2020-01-25 (Released:2020-02-18)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
5
7
目的:生薬・オウゴンを構成生薬とする漢方薬の重大な副作用として,間質性肺炎や肝機能障害が挙げられる.バイカリン(BL)はオウゴンの主要成分であり,これら副作用への関与が強く示唆されている.本研究では,漢方薬を安全に使用するための基礎資料を得ることを目的に,オウゴンが配合される漢方薬中のBL量を定量した.方法:オウゴンが1日量として1.5~4 g配合される漢方薬28処方の煎液と医療用エキス製剤のBL量を定量した.結果:同一の漢方処方では,煎液とエキス製剤間でBL量に1.7倍から4倍の差が認められ,いずれも煎液中のBL量が多かった.さらに,小柴胡湯,乙字湯,大柴胡湯,柴朴湯,黄連解毒湯,柴苓湯の各エキス製剤における製造会社間のBL量を比較した.その結果,小柴胡湯,乙字湯,大柴胡湯,柴朴湯エキス製剤において,それぞれ最大2.6倍,1.6倍,1.5倍,1.3倍の有意な差が認められた.一方,黄連解毒湯と柴苓湯のエキス製剤においては,製造会社間で有意な差は認められなかった.考察:医療現場においては,漢方薬の煎液にはエキス剤と比較して1.7~4倍のBLが含まれることを認識し,煎じ薬はより効果が期待できる反面,副作用の発症頻度も増える可能性があることを考慮して使用するべきと考える.また,漢方薬の調製に使用したオウゴンの量のほか,製剤中に含まれるBL量とそのアグリコン(非糖部)であるバイカレイン(BA)量に関する情報も示すことを提案する.