著者
原 涼子 奥出 祥代 林 孝彰 北川 貴明 神前 賢一 久保 朗子 郡司 久人 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.107-111, 2011 (Released:2012-02-22)
参考文献数
11

目的:心因性視覚障害は、視力障害や視野障害の他に色覚異常を訴えることが多い。今回、心因性視覚障害と診断され、片眼の色感覚が消失した1例を経験したので報告する。症例:16歳、女児。右眼で見た時の色感覚の消失を自覚し、近医を受診。2009年6月に東京慈恵会医科大学附属病院眼科へ紹介受診となった。症例は高校生であり、部活動に加え生徒会や学校行事など、学校生活の中で様々な役割を担っており忙しい毎日を過ごしていた。矯正視力は右眼(1.5)、左眼(1.5)であり、右眼のGoldmann視野は、V/4イソプターのらせん状視野、I/4からI/1イソプターの求心性視野狭窄を呈した。色覚検査として、仮性同色表、New Color Test、色相配列検査を片眼ずつ行い、いずれの検査も右眼のみ強度の色覚異常が検出された。特にNew Color Testでは有彩色と無彩色を分けることが難しく、主訴と一致する結果であった。全視野刺激網膜電図における杆体反応・錐体反応の潜時・振幅は正常範囲内であった。頭部MRIに異常所見はなかった。心因性視覚障害と診断し、経過観察していたところ、2010年2月に、色覚が改善したと本人から報告があり、2010年5月に再度色覚検査、視野検査を行ったところ、結果は全て正常であった。経過中、左眼の視機能異常は検出されなかった。結論:心因性視覚障害と診断されたのが、文化祭の実行委員になった直後であったことから、ストレス等による環境的・心理的要因がその背景にあると考えられた。
著者
並木 祐子 林 孝彰 奥出 祥代 竹内 智一 北川 貴明 月花 環 神前 賢一 久保 朗子 常岡 寛
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.123-128, 2010-12-29

<B> 目的:</B>小口病は常染色体劣性の遺伝形式をもつ先天停在性夜盲の一つで、視力、視野、色覚に異常はないと考えられている。以前、我々が報告した錐体機能低下および進行性の視野障害をきたし、<I>SAG</I>(アレスチン)遺伝子変異(1147delA)を認めた高齢者小口病の1例(臨床眼科 63:315-21, 2009)について、今回は、黄斑部機能、色覚について検討したので報告する。<BR><B> 症例:</B>70歳、男性。矯正視力は右(1.2)、左(1.5)、Humphrey視野(中心10-2全点閾値)の中心窩閾値は良好であった。スペクトラルドメイン光干渉断層計所見として、中心窩付近の視細胞内節外節接合部ラインは明瞭であったが、それ以外の部位では不明瞭であった。錐体機能を反映する黄斑部局所網膜電図で、a波およびb波とも著しい振幅低下を認めた。片眼ずつ色覚検査を行い、石原色覚検査表国際版38表では誤読数が右4/21、左3/21と成績は良好であった。Panel D-15では両眼ともpass(no error)であったが、Farnsworth-Munsell 100 hueテストにおいては、青黄色覚異常の極性に一致し、総偏差点は右268左292と年齢によるスコアを超える異常値を示した。<BR><B> 結論:</B><I>SAG</I>遺伝子変異(1147delA)陽性小口病の中には、黄斑部錐体機能が低下し、経過中に典型的な後天青黄色覚異常を呈するものがある。