著者
神波 雅之
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1.磁気共鳴映像法による脳循環評価健常者における無呼吸時の脳の信号変化をT_2^*強調画像(スピンエコー型エコープラナー法)により測定し、無呼吸時の信号強度上昇を確認した。信号強度上昇はhypercapniaによる脳血流量増加の効果が脳血液量増加、動脈血酸素飽和度低下の効果を上回り、oxygenation上昇がもたらされたためと考えられた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても無呼吸時の脳の信号上昇を認めた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においては健常者に比して信号強度変化は有意に大きかった。無呼吸発作の頻発する患者では無呼吸と過呼吸の反復によりhypercapniaの効果が増強されているものと考えられた。本研究により無呼吸時の脳の信号変化が臨床用磁気共鳴映像装置により測定可能であることが明らかにされた。本研究の成果は学会において発表ならびに学術雑誌に投稿中である。2.磁気共鳴分光法による脳機能評価脳の器質的異常を有さない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の脳プロトンスペクトルを測定し、ポリソムノグラフィーによる重症度(apnea index;AI)別および健常者との比較検討を行なった。中等症以上(AI≧20)の閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者において大脳深部白質のN-acetylaspartate/choline比の有意な低下を認めた。本知見は通常の磁気共鳴映像法等の検査では全く異常を認めない閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者においても脳代謝の変化を生じていることを示すものである。本研究により閉塞型睡眠時無呼吸症候群の中枢神経障害の評価法としての磁気共鳴分光法の可能性が明らかにされた。本研究の成果は学会および学術雑誌に発表した。