著者
齋藤 秀樹 井坪 豊明 神田 信行 小川 享 竹岡 政治
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大學學術報告. 農學 (ISSN:00757373)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.31-46, 1990-11-19
被引用文献数
7

大形種子をもつ樹種では再生産器官にどれほどの同化産物が流れるのか, 虫媒花樹種は花粉が少ないのかなどを明らかにする目的で, 京都府芦生のトチノキ2林分で6年間の調査を行なった。主な結果は次の通りである。(1)花粉を含めた生産量合計は, 豊作に2t/ha・yr, 平均1.2t/ha・yr程度, 0.5t/ha・yrが凶作の値である。合計値は他の樹種に比べて多くはないが, 種子では多い部類にはいる。(2)乾物生産の配分は, 凶作年(40%)を除くと, 雌性に集中する(65&acd;85%)。(3)雄花, 両性花の開花数の年次変動は小さい。(4)雄花と両性花の性比には林分差があり, 0.013&acd;0.037と0.048&acd;0.085である。(5)開花前の1雄花に含有する花粉量は246&acd;321×(10)^3個, 1.56&acd;1.88mgである。(6)1雄花の花粉量に林分開花数を掛けて推定した林分の花粉生産量は, 年により5.29&acd;12.7(平均9.13)×(10)^<12>/ha・yr, 32.0&acd;87.4(同55.9)kg/ha・yrになる。他の林分は, これらの値より20%少ない。(7)トチノキ林の花粉数は風媒花樹種にほぼ等しいか, むしろ多い。(8)種子の豊作は両性花の多い年に起こる。高い結実率も豊作の原因の一つとなる。結実率は, 例外の1年があるが, 花粉数の多少と並行して推移する。胚珠1個の形成に準備された花粉数は1.3&acd;3.2×(10)^6,他の林分はこの1/2である。