著者
綽 宏二郎 芝山 道郎 神田 英司 板橋 直 坂西 研二 阿部 薫 木村 昭彦
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-89, 2016

<p>近年わが国では、突発的な豪雨が多発しており、傾斜畑における表面流出の発生頻度が高まっている。傾斜畑で発生する表面流出は、土壌中に含まれる肥料成分や重金属等を流域排水系へ流入させるため、自然生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。表面流出量の計測は、水位計などの計測機器を傾斜畑下端に設置して、直接的に流出量を計測する方法が一般的である。ところが、表面流出に伴い流出する作物残渣や土壌粒子などが計測機器周辺に堆積し、これによって生じる計測トラブルにより、取得したデータが信頼性に欠けることがあった。そこで、流出物の堆積による影響を受けない非接触的なセンシング手法として、自動で表面流出現象を動画撮影する装置を開発し、この装置を屋外の傾斜枠圃場に設置して観測実験を行った。撮影された動画に、流れの速度分布を調べる方法のひとつであるPIV 解析を適用した。PIV 解析には流れの目印(浮子)が必要であり、表面流出時に浮遊する作物残渣や土壌粒子等を浮子として利用した。解析の結果、それらの流速が推定され、表面流出量の時間的変化を把握する手がかりを得ることができた。</p>