著者
酒井 潔 山本 哲三 神谷 博文
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.p757-763, 1983-06

斗南病院で4年間に子宮全摘除術を受けた632例の患者に手紙を出し,アンケート調査に対する協力を依頼した.応募数は214例で回収率は38.4%であった.このうちから両側卵巣摘除群,無配偶者群,およびMPIテストにおけるL-スコア高値群を除く171例が調査の対象となった.手術後性反応の変化についてみると,性的欲求は減退67例(39.2%),不変89例(52.0%)また性交時分泌物では減退79例(46.2%)が不変68例(39.8%)を上まわった.年齢との関係でみると,高年で手術をうけるほど術後の減退は著明で30代では7例(24.1%)が術後性的欲求が減退したのに対して50代では13例(72.2%)に減退がおこった.術後,子宮喪失感を自覚する女性が77例(52.0%)ありこの群で術後性交時分泌物が減退したものは54例(70.1%)におよんだ.それに反して子宮喪失感を自覚しない群では性交時分泌物の減退を訴えるものは25例(35.2%)にとどまった.子宮摘出後,性交時に子宮からえられる感覚がなくなったと自覚する女性が39例(27.1%)あった.このなかで性感の獲得が困難となったと訴えたものは27例(69.2%)におよんだ.一方,性交時子宮感覚を自覚しない群では術後性感の獲得が困難となったものは19例(18.1%)にすぎなかった.一般に性交時子宮からえられる感覚を自覚しない群では子宮摘出後性反応の低下は軽微であるのに反して,性交時子宮感覚を自覚する群が子宮摘除術を受けた場合,術後性反応の低下が著明におこることがあきらかにされた.