著者
神谷 昇司
出版者
人間環境大学
雑誌
(ISSN:1348124X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-11, 2009-03-31

平成十七年一年間の柏露軒茶会記の内、先回は風炉の時期である五月から十月までの道具組を記載しました。今回は十一月と十二月を取り上げます。十一月は炉の正月、炉開き・茶壷の口を解く口切の時期です。茶摘みは二月四日の立春から数えて八十八夜(五月二日)くらいから準備をして五月十日ころから始まります、抹茶は「藁下十日、簀十日」といって、茶摘みの頃から逆算して、その十日くらい前に藁をのせて、さらに十日ほど前には、茶畑に組まれた足場に簀を拡げておくのが標準的段取りです。摘み取られた生葉は蒸して乾燥して「荒茶」となる。荒茶を「茶撰り」にかけて「碾茶」ができる。碾茶は茶壷の中に半斤の紙袋に収められた数種類の濃茶(夫々茶銘を記す)と周りに薄茶を詰めて濃茶が湿気ないように包み込んで暗冷所に一夏貯蔵される。秋まで寝かせると熟成されて旨みを増します。いわゆる「口切」を迎える頃にもつとも適した風味になるわけです。この十一月に父八十八歳、母八十歳、合わせて百六十八歳の「いろは茶会」を催しました。また十二月の茶会記は、利休居士の孫、元伯宗旦の命日にあたる十二月十九日に毎年厳修する「遠忌茶会」を取り上げました。それぞれの亭主の思い入れを感じていただければ幸いです。
著者
神谷 昇司
出版者
人間環境大学
雑誌
(ISSN:1348124X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-16, 2007-03-31

平成十七年一年間の我が家の茶会記を淡交社刊『なごみ』に連載しました。「年間の道具の取り合わせをみて、茶会に対する思い・客への心づかい・季節の移ろい・茶道具の妙味・茶道具周辺の時代背景などを感じていただけると思います。茶の湯は、亭主と客の二人称で観客のいない即興劇が、時間的経過の中で展開されます。この茶室空間は、亭主の「創意・工夫」によって、あるときは主客の緊張した空間にも、寛いだ華やかな空間にもなります。一月はお正月のおめでたい「初釜」を、厳寒の二月は逆勝手「大炉(だいろ)の茶会」、三月は「ひな祭り」(上巳(じょうし)の節句)、四月は「桜の花見茶会」と進み炉を塞いで、五月は畳の上に風炉・釜を置く「初風炉の茶会」を五月節句でとりあげました。六月は岐阜・長良川の「鵜飼の趣向」、七月は「七夕」、八月は「涼味の茶会」、九月は「月をテーマ」に、十月は風炉の最後の季節で「名残の茶会」、十一月は炉の正月、炉開き・茶壷の口を解く口切の時期です。ちょうど父八十八歳、母八十歳、足して百六十八歳の「いろは茶会」を取り上げました。最後の十二月では利休居士の孫、元伯宗旦の命日に厳修する「遠忌茶会」で締めくくりました。今回は一月から四月までとしました。それぞれの茶会における亭主の思い入れを感じていただければ幸いです。