著者
吉川 慎一 金 泰正 吉田 哲也 米瀬 淳二 泉谷 敏文 福井 巌 石川 雄一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.9, pp.788-791, 1998-09-20
被引用文献数
2

症例は44歳,男性.尿閉を主訴に某院に入院.CTにて膀胱内に突出する前立腺部腫瘤が経尿道的生検にて移行上皮癌(TCC)と判明し紹介された.初診時,陰茎は半勃起状態,全周性に弾性硬で自発痛と高度な圧痛を伴いpriapismと診断した.陰茎海綿体針生検を施行し,前立腺移行上皮癌T4N0M1(陰茎転移)と診断した.4者併用化学療法(IFEP療法)を2コース施行し,平成9年1月30日膀胱全摘術・陰茎全摘術及び回腸導管造設術を施行した.病理学的には前立腺浸潤と陰茎海綿体及び右閉鎖リンパ節転移を伴う膀胱原発の移行上皮癌で,前立腺の腫大は主に腺性過形成によるもので異型性過形成を伴っていた.
著者
大久保 雄平 福井 巌 坂野 祐司 吉村 耕治 前田 浩 米瀬 淳二 山内 民男 河合 恒雄 石川 雄一 山本 智理子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1138-1141, 1996-09-20

44歳,家婦。1年3ヵ月来の肉眼的血尿,排尿困難を主訴に1994年6月初診。経膣的な触診にて膣前壁に柔らかい腫瘤を触れ尿道腫瘍を疑った。尿細胞診では腺癌を疑わせる多数の悪性細胞集塊を認めた。尿道膀胱造影にて尿道憩室を2つ認め,尿道鏡にて尿道括約筋の近位と遠位の2カ所にそれぞれの憩室口を認めた。膣からの圧迫により近位の憩室から表面平滑な小豆大の腫瘍が突出したのでこれを切除したところ,病理学的には低分化型の移行上皮癌が疑われた。尿道憩室癌の診断にて8月9日前方骨盤内臓器全摘術,インディアナパウチ造設術施行。近位憩室内に認められた腫瘍は病理学的に管状,乳頭状および嚢胞状など多彩な腺様構造を呈し,核が上皮細胞の表面に突出した,いわゆるhobnail(鋲くぎ)パターンを認め,mesonerphric adenocarcinomaと診断した。術後,局所に放射線照射を追加し退院。術後1年4ヵ月の現在再発,転移を認めていない。女子尿道mesonephric aenocarcinomaはその組織発生に関していまだ統一された見解はなく,自験例は文献上44例目と思われる。