著者
福井 昌夫
出版者
日本環境動物昆虫学会
雑誌
環動昆 (ISSN:09154698)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.87-92, 2006-10-14
参考文献数
14

性的成熟したハイイロゴキブリ雄が,性的成熟しているが雄を受け入れる状態にない雌に求愛発音を示すことがHartmanとRoth(1967)によって報告された.著者は上の報告,すなわち,雄が雌に求愛行動を示した後,上翅前縁部を前胸背板と摺り合わせて摩擦音を出すことを,確認した.性成熟した雄は,十分に成熟していない成虫雄と雌雄の終齢若虫に求愛後求愛発音を示した.これらの求愛発音の対象になったステージの個体に対して雄が示した求愛発音を録音し,その周波数分析を行った.音の特性は凡よそ60dBの強さを持った約15kHzの周波数を示し,HartmanとRothのデータに一致した.従って,性成熟した雄は十分に成熟していない成虫と終齢若虫の雌雄を,実際には配偶相手と誤認しているのだが,成熟した雌と認識しているように思われた.しかしながら,成熟した成虫の雌雄と終齢若虫の識別が出来ることが議論されている.