著者
小松﨑 記妃子 山田 真実子 福宮 智子 佐藤 陽子 山﨑 あや 渡辺 純子 福地本 晴美
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.499-507, 2020 (Released:2021-01-28)
参考文献数
7

看護学生による臨地実習に関する評価尺度の動向を明らかにする.本研究は,臨地実習での教授者の教育能力および学生の看護実践能力の両側面の能力を評価するための資料とする.医中誌Web Ver.  5を用いて,検索対象年は2005年1月〜2015年9月,検索式は「臨地実習」and「看護学生」and「評価」とし原著論文に限定した.その中から看護学実習に関して尺度を用いた評価を行っている文献(独自質問紙のみを使用した文献は除外)を分析対象とした.検索の結果,1,132件が抽出された.このうち本研究の条件に該当する文献は73文献あった.使用されている評価尺度は55種類あり,1文献に対し1〜11の尺度を用いるなど多岐にわたっていた.評価者は,教員,指導者,学生の3つに分類でき,評価対象は,教員,指導者,学生,実習過程(実習全般),実習環境の5種類に分類できた.人を評価対象とした文献のなかで,教員を評価した文献は4件で最も少なく全て2011年以降に確認された.指導者を評価した文献は20件,学生を評価した文献は45件あり,2005年から確認できた.教員を評価対象とした文献のうち,その評価者は,学生3件,教員(自己評価)1件であり,評価尺度は,前者は全て日本語版Effective Clinical Teaching Behaviors(以下ECTB),後者は教授活動自己評価尺度―看護学実習用―が用いられていた.指導者を評価対象とした文献における評価者は,学生14件,指導者(自己評価)6件であった.評価尺度は,前者のうち11件がECTB,3件が授業過程評価スケール―看護学実習用―であり,後者は全てECTBが用いられていた.近年の看護学実習における教育評価に関する研究では,教授者の教育実践能力を評価する尺度には,授業過程評価スケール―看護学実習用―やECTBの共通性が確認されたが,教員を評価対象とした研究は僅かであった.また,評価の時期は,基礎実習後と領域実習の前後などで2時点から3時点で実施されており,基礎看護実習から全ての実習終了後までなど一連の過程を通じた学生の評価に関する研究は見当たらなかった.看護実践能力における要素別の評価尺度を組み合わせて実習を評価していることが明らかになった.
著者
富田 真佐子 福地本 晴美 鈴木 浩子 芳賀 ひろみ 河口 良登 竹内 義明 川上 由香子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.667-675, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
25

炎症性腸疾患患者の健康関連QOLを包括的視点と疾患特異的視点から明らかにし,炎症性腸疾患と共にある患者のQOL説明モデルを示すことを目的とする.対象者は,都内にあるA大学病院消化器内科に通院中の外来患者63名.質問紙法により,対象者の属性(疾患名,性別,年代,社会活動,治療年数,治療内容,手術歴),包括的尺度としてSF-8,疾患特異的尺度として著者が作成したIBD患者のQOL尺度19項目を用いた.分析は,各項目について記述統計量を算出し,SF-8の平均値について国民標準値および既存の文献と比較した.QOLモデルを作成するためにSF-8とIBD患者のQOL尺度各項目とのピアソンの相関係数を算出した.QOL尺度は5つの下位概念ごとに因子数を1とした主成分分析によって合成した成分得点を用いた.これらの相関係数を参考にモデル図を作成し,パス解析を行い,総合効果を算出した.倫理的配慮として調査は匿名にて行い,書面にて調査の目的と方法,自由意志での参加,拒否による不利益がないことについて説明した.本研究は昭和大学保健医療学部倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:403).対象者は,潰瘍性大腸炎51名(81%),クローン病12名(19%),男性28名(44%),女性35名(56%),年齢は40歳代が最も多く18名(29%),平均治療年数平均11.7±8.9年,治療内容は,5-ASA薬46名(73%)が多く,開腹手術経験ありは8名(13%)であった.SF-8の8つの概念のスコアの平均は50前後で,PCS(身体的サマリースコア)は50.1±6.4,MCS(精神的サマリースコア)は48.6±7.0であった.国民標準値と比較したところほとんど有意な差はなかった.SF-8とQOL尺度の5つの下位概念の成分得点との相関係数は±.218〜.698であった.SF-8のPCSとMCSを最終的な従属変数とした健康関連QOLモデルを描いたパス解析を行った.総合効果では,「心理社会的生活への負担」に最も影響するのは「食生活上の困難さ」であり,健康関連QOLのPCSとMCSに最も影響するのは「心理社会的生活への負担」であった.対象者のSF-8のスコアは国民標準値とほとんど差がなく,下痢や腹痛による苦痛が少なく食生活上の困難も少ない者は,健常者と大差ないQOLを維持できることが示された.パス解析の結果から,仕事や心理的な負担,食生活の困難さを感じている者は健康関連QOLが下がるが,周囲からのサポートは活力をもたらし,心理社会的負担を軽減させ,前向きに病いと付き合うことにつながることも示された.