著者
大山 雄己 福山 祥代 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.375-380, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

広場や街路といった,歩きを主眼においた公共空間整備に注目が集まっている.近年多くの都市において,1つの目的施設のみに滞在後すぐに帰るといった限定的なまちなかの使われ方が問題として多く見受けられることからも,小滞在を発生させて連鎖的な回遊行動を生み,まちなかの滞在時間を延ばすための空間計画の展開が求められている.本研究では回遊中の一連の活動間の相互依存性を考慮するため,「活動欲求」を導入した離散連続モデルによって活動の発生確率を定式化した.細かな滞在を把握し,正確な滞在時間の情報の得られるプローブパーソンデータを用いて回遊行動の分析を行なった.現状の課題として,来訪者の多くが「1つの目的施設のみに滞在後,すぐに帰る」行動をとっていること,小滞在の発生は流入地点と主目的地の1往復の間という限られた範囲であることを把握した.モデリングにおいて活動欲求を考慮したことで,推定結果からは連鎖的活動を発生させて滞在時間を向上させるための現実の施設配置,街路の接続方法など,都市空間の計画に対する有効な示唆を得た.