著者
福島 千賀子
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.172-165, 1997-03-22

天孫降臨に先立って葦原の中つ国に遣わされた天若日子(あめのわかひこ)を、決定的な反逆者に追い込んだのは天佐具売(あめのさぐめ)である。しかし天つ神の印としての弓矢を携えた聖なる特使天若日子が、何故に天佐具売如きものの進言に絶対服従するのか。彼女は昔話の天邪鬼(あまのじゃく)や山姥、トリックスターなどと関連づけて解釈されてきたが、その本来の性格は神の子を守り育てるウバであり、天若日子の先導的役割を果す巫女であったと考えられる。天佐具売を我国の巫女の系譜の上に位置づけて見てゆきたい。