著者
藤田 富士男
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.128-118, 2005-03-31

江戸川乱歩は数々の推理小説を世に送り出したわけだが、なかでも出色のキャラクターは明智小五郎である。ダンディーな着こなしと見事な変装で、ある時は、一人で美人怪盗「黒蜥蝪」に対抗したり、またある時は、少年探偵団を率いて怪人二十面相と対峙する。その明智も登場したころの容貌は野暮な高等遊民といったものだった。
著者
大野 裕史
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-56, 1996-03-22

マスターベーションの頻発により、適切行動の形成が困難な症例に対して、感覚消去手続きを用いた。指導経過から、マスターベーションは刺激性制御を受けており、指導室という刺激下での制御が形成途中であった可能性を指摘した。また結果の妥当性を検討した結果、変化量は十分であり、マスターベーションの減少に伴い適切な反応が増大した。
著者
福島 千賀子
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.172-165, 1997-03-22

天孫降臨に先立って葦原の中つ国に遣わされた天若日子(あめのわかひこ)を、決定的な反逆者に追い込んだのは天佐具売(あめのさぐめ)である。しかし天つ神の印としての弓矢を携えた聖なる特使天若日子が、何故に天佐具売如きものの進言に絶対服従するのか。彼女は昔話の天邪鬼(あまのじゃく)や山姥、トリックスターなどと関連づけて解釈されてきたが、その本来の性格は神の子を守り育てるウバであり、天若日子の先導的役割を果す巫女であったと考えられる。天佐具売を我国の巫女の系譜の上に位置づけて見てゆきたい。
著者
塩田 真紀子
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-80, 1995-03-20

ニュージーランドの特異な女流作家ジャネット・フレームは,20代の大半を精神病院で過ごした。退院後,逃れるようにイギリスに渡り,あしかけ8年滞在して,自己のアイデンティティ追求と作家として自立する道を模索した。フレームの文学は,「狂気体験」を抜きにしては語れない。本論では,フレームが作家として自立のメドを立てるまでを前編とし,帰国後,「狂気」抜きの作家として世に問うた文学の特徴を後編として論じ,今回は紙幅の都合上,前編だけを載せることにした。
著者
本田 康雄
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
no.13, pp.160-152, 2004-03

大新聞(おおしんぶん)を代表する郵便報知新聞は政府の法令、通達また全国各地、東京府下の出来事(ニュース) を「郵便」で読者に送り「報知」する目的で創刊された。しかし、刊行されると読者大衆の興味は一面の政令の公布や諸県のニュース以上に東京府下を中心とする犯罪、情痴事件の雑報、所謂三面記事に集中した。「雑報」記事の面白さに注目して江戸文化の伝統を伝える浮世絵師と戯作者が「新聞錦絵」を工夫して爆発的な流行を起した。雑報記事を浮世絵に仕立て記事本文を添えたのである。しかし、事件の発生と錦絵の刊行との間には版画作成のための時間の差がある。この時間差を埋めて記事の挿絵の形式で、新聞記事とその錦絵を同時掲載する紙面を創案したのがタブロイド版の小新聞(こしんぶん)(雑報記事を主とする大衆紙)「平仮名絵入新聞」であった。この新聞は多くの読者を獲得し、明治十二年にはこの形式にならって「大阪朝日新聞」が創刊された。
著者
中里 理子
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.115-123, 1997-03-22

順接条件を導く「には」「からには」「以上」について、用例を基に意味・用法を整理した。前件と後件の意味の関係を考えるとともに、前件・後件を結び付ける際に意識される主観性や、前件・後件それぞれの意味上および文体上の制限について考察した。とくに、ともに因果関係を表す「からには」と「以上」、「ないことには」と「ない以上」は用法の重なる類義表現であり、その違いについて詳しく検討した。
著者
柏谷 直樹
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.140-130, 1995-03-20

十三世紀後半書写の瑞光寺蔵の訓読の仮名書き法華経九品九軸は零本であるが、一巻経が裁断されて現在の姿になったものと思われる。その訓法は、天台宗系統のものと考えられ、「而」字の副詞の訓「シカク」・敬語動詞「マヰアフ」他、珍しい和訓も交えて読んでいる。本経巻は、能筆で料紙も美麗な雲紙を用いており、装飾経としても優品であるので、手鑑の中に貼り込まれて伝わる例も多いようである。残りの経巻の発見が期待される。
著者
益子 政史
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2003-03-31

英国初の"珍事"と、大衆紙サン(2002年7月8日付)が特報した「体外受精(IVF)のミスで白人女性に産まれた黒人赤ん坊」の記事の翌日、高級紙タイムズの後追いの一、三面の大特集でイギリス(場所は不明)、ニューヨーク、オランダのIVF事件の詳報をみる。また、同日ニューヨークタイムズ国際面にはロイター電の興味深い談話もあり、一方我国の朝日、東京各紙も伝えるこの国際・社会面記事は「人間(誕生)の不可思議さ」を暗示するようでもある。
著者
藤田 富士男
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A21-A28, 1994-03-20

黒瀬こまは、熊本女学校、福岡英和女学校を経て、一九〇五年一二月に青山女学院、英文専門科へ編入する。そこへ友人から渡米の誘いを受け、手続きのため帰省することになる。熊本には、援助者、木村萬作の甥である木村秀雄がアメリカから帰国していた。こまの恋慕の情は燃えあがり、周囲の反村を押して一緒になる。木村駒子と名のるようになり、彼女の眼は、日本社会、世界へと次第に拡がり始めていく。
著者
藤井 明
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.150-142, 2004-03-31

宇都宮線白岡駅西口の県道を越えたところに「新設白岡車站之碑」なる石碑が建っている。中島撫山(文政十二年一八二九〜明治四十四年一九一一) の最晩年の撰文になるものである。東北線白岡駅新設の経緯が具体的に記されているが、新駅開設に向けての地域住民の熱望が看取されるとともに、駅開業後の風紀の紊乱を予想しての撫山の言辞には、終生警世の木鐸を鳴らしつづけた儒者としての責任感と気概とがうかがわれて面目躍如たるものがある。以来九十余年、東京のベッドタウンと化した現在の白岡町の玄関口としての駅の盛況を見るとき、まことに今昔の感に堪えない。
著者
小川 恵
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.131-139, 1994-03-20

中国における書の変遷を辿り,書道史上最も重要かつ多彩であると言われる漢代において発生した隷書の興起と,書美の展開について考察した。まず,漢以前(殷・周・秦)の書の変遷と,漢代において隷書を発生させるに至った経緯を辿り,隷書がどのような書美の展開を遂げたのかを考えた。更に,各地で出土された木簡に見る書体(書法)の特徴を分析し,考察した。
著者
槌本 衛
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.79-88, 1997-03-22

1996年7月19日〜8月4日(17日間)米国のアトランタにおいてスポーツの祭典、オリンピック(以下五輪)大会が開催された。この期間は世界的なスポーツ大会は開催されておらず、世界の眼はこの五輪大会に釘付けにされた。日本においても各新聞・放送機関は特別欄・特別番組等を設けて報道し、国民を熱狂させた。今回は一般紙から五輪関係の報道を競技別に統計的に処理して考察するものである。
著者
臼井 智美
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.91-97, 2005-03-31

本稿では、1990年代以降の外国人児童生徒教育に関する諸研究の成果と課題の整理を、指導体制の整備という観点から行った。その結果、指導体制の整備とは、次の4つの要因を改善する経営戦略が実行されたときに成り立つのではないかという仮説を示した。(1)言葉が通じないことによるコミュニケーション上の困難に起因するもの、(2)日本と外国との文化的相違に起因するもの、(3)外国人児童生徒教育の担当教員の物理的・精神的孤立に起因するもの、(4)指導上の物理的条件や資源の不足に起因するもの。
著者
本田 康雄
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.96-87, 2003-03-31

小新聞「平仮名絵入新聞」(東京絵入新聞)は犯罪・情痴事件等の報道に挿絵を入れて人気を得た。「仮名読新聞」の「鳥追ひお松の伝」、「東京絵入新聞」の「金之助のはなし」「毒婦お伝のはなし」は事件を連載記事として回数を重ね特に絵入り雑報の連載は読者にとっては新聞紙上に江戸の草双紙合巻が展開する観があった。明治十三年からは東京・大阪の新聞にこの種の絵入続き物が「現代物」「時代物」の二本建てで掲載された。明治十五年より大新聞(政論新聞)は政党新聞となり度々の新聞条令(特に明治十六年の改正条令)によって廃刊乃至雑報記事中心の新聞へ性格を変更した。その時、小新聞(特に朝日新聞)が絵入続き物を武器として新聞界を制覇した。明治十九年より読売新聞は給人続き物に対抗して「小説」を「小説欄」に掲載した。以後、読売の「小説」と朝日の「絵入続き物」が競合、融合しつつ新聞小説が全国各紙に普及するに至る。
著者
益子 政史
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-24, 1997-03-22

イギリス人やアメリカ人が互いの国を初めて訪れた場合、同じ単語が異った意味に用いられているため、双方が「意思の疎通を欠いて」(at cross-purposes)、爆笑をも生み、誤解から軽いカルチャーショックを受けるなど、英・米人にも悩みの種があるようだ。この背景には「英・米の歴史」が横たわっているのだが、ここでは史論よりも実践的に、『英・米の語義差』による両者のとまどいや笑いを集めて、管見を記す。
著者
塩田 眞紀子
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-34, 1997-03-22

ジャネット・フレームの著作は、常に、周縁に追いやられたものの視点で語られる。Scented Gardens for the Blind は、失語症の精神病患者・ヴェラの想念を通して、核戦争による人類滅亡を回避する道をコミュニケーションの危機の問題とからめて扱った作品である。ヴェラの沈黙は、人類の今日の惨状を招いた論理(言語)の拒絶を示し、彼女はそれに代わる新しい言語の獲得を目指したが、人類の現状を反映して果たさなかった。
著者
益子 政史
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.47-58, 2004-03-31

ヘンリー・フィールディング(Henry Fielding 1707〜1754)は若き劇作家兼演出家から、弁護士、治安判事へ変貌を遂げ、英国最高の風刺小説を著しつつ、イギリス警察の礎を築き、新聞発行に努めジャーナリストの見識を深める一方で、エンターティナーとして『現代用語集』(A Modern Glossary)を自前の週刊新聞「コベントガーデン・ジャーナル」に載せ、面白く味わい深いその記事はロンドン市民の喝采を得た。その全用語をここに記す。