- 著者
-
笠原 敏史
福島 順子
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
(1)2頭のサルに対する訓練と手指機能パフォーマンステストの有用性について検討を行い,(2)サルの大脳皮質第一次運動野の上肢領域(主に手指領域)梗塞作成前の上肢動作をVTRにより,(3)第一次運動野の上肢領域を皮質内微小刺激によってマッピング、(4)さらに梗塞作成後の麻痺の状態ならびに機能回復過程について,上肢運動障害,代償動作を比較した.(1)アクリル板で深さの異なる5つの円柱状の穴(Kluver board)を作成した.訓練前のテスト結果では,2頭のサルとも深さが徐々に増加するにつれ所要時間は増加した.(2)サルの把握動作は,浅い穴では栂指とII指の間にリンゴを挟み,穴が深くなるとIIからIV指を穴の中に差込み,屈曲して掻き上げる方法であった.これは2匹のサルで同様であった.(3)GOFとネンブタール麻酔下で開頭し優位半球の第一次運動野(A12L18)に微小電極を用いて刺激し,マッピングを行った。その結果、中心溝の吻側に内側から外側にかけて,肩領域、肘〜前腕領域,手〜手指領域の順序で筋収縮が観察された.手指領域は,運動野の内側から外側にかけて第Vから第II指の屈曲、伸展が順に誘発された.これらの結果は,従来の運動野上肢領域の体部位局在に一致していた.(4)マッピング終了後,手指領域に梗塞を作成した.両サルとも術後翌日に対側上肢に麻痺を認めた.術後は麻痺側を使うも失敗が多く非麻痺側を用い,数日間は麻痺側を使わなかった.麻痺側を使う際,隣接する肘関節と肩関節に麻痺による運動障害を代償する動作が確認され,特に,肘や肩関節を用いて手先を前後に動かす,身体を傾けるまたは移動する行為が見られた.運動障害からの機能回復が見られると,所要時間の減少とともに代償動作の頻度も減少し,術後1ヶ月と術前でほぼ変わらない成績であった.