著者
笠原 敏史 鳥井 勇輔 高橋 光彦 宮本 顕二
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.523-528, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

〔目的〕段差昇降時の支持脚の大腿四頭筋(内側広筋と外側広筋)と床反力の関係について筋電図計と床反力計を用いて測定した。〔対象〕若年健康男性8名とした。〔結果〕内側広筋と外側広筋の筋活動は昇段動作で最も大きな値を示していた。内側広筋と外側広筋の筋活動の比率は歩行に比べ段差昇降動作で大きな値を示し,内側広筋の活動の関与を高めていた。垂直方向の床反力の値は動作間で差はみられなかったが,昇降動作時の外側方向の分力は歩行に比べ有意に低い値を示していた。内側方向の分力に動作間の差がみられなかったことから,相対的に内側方向への力が増大し,内側広筋の筋活動の増大に関連している可能性が示唆される。〔結語〕段差昇降では身体の内外側方向の安定化に内側広筋の活動が寄与していることが明らかとなり,昇降動作の理学療法ではこれらのことに考慮して行う必要がある。
著者
宮本 顕二 笠原 敏史 野坂 利也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.665-669, 2008 (Released:2008-11-21)
参考文献数
11

〔目的〕胸部あるいは腰部コルセットの圧迫による呼吸機能への影響を調べた。〔対象〕健常成人男性6名(28.2±5.3 [SE]歳)。〔方法〕締め付け圧を調整出来る胸部コルセットと腰部コルセットを別々に装着し,締め付け圧0 mmHg, 20 mmHg,40 mmHg, 60 mmHgの条件で肺気量分画を測定した。〔結果〕胸部コルセット装着は,締め付け圧が増加すると肺活量,予備呼気量,全肺気量は減少した。1回換気量も減少したが有意差はなく,呼吸数の増加で分時換気量が維持されていた。全肺気量,肺活量,予備呼気量,努力性肺活量の減少は胸部コルセット締め付け圧=40 mmHgからみられた。なお,残気量は締め付け圧に関係なく影響しなかった。一方,腰部コルセット装着は締め付け圧に関係なく予備呼気量を除く他の肺気量分画に影響しなかった。〔結語〕胸部コルセットを使用する場合は,コルセットが呼吸運動を抑制する危険性を考慮すべきである。
著者
高橋 光彦 笠原 敏史 水村 瞬 永谷 祐美子 佐藤 貴一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.A0616-A0616, 2006

【目的】<BR>端坐位での静的・動的側方傾斜刺激に対する姿勢反応を明らかにする.<BR><BR>【方法】<BR> 静的側方傾斜刺激:被験者は健康な男子大学生9名であり,平均年齢22.1±1.9歳,平均身長173.1±2.4cm.被験者に電動ティルトテーブル上で,上肢は胸の前に組ませ,下肢は股関節内外転中間位,骨盤は中間位になるように端座位になり、傾斜角度は0°から5°間隔で7つの肢位(30°まで)で実施し,それぞれの角度で10秒間坐位保持を実施し、頸部,体幹の傾斜角度を解析する.<BR> 動的側方傾斜刺激:被験者は男子大学生6名であり、平均年齢23.2±2.2歳.被験者には全身黒タイツを着用し、反射マーカーを付けて電動ティルトテーブルに座り、上肢を胸の前で組ませ股関節内外転中間位・骨盤直立位姿勢をとらせ、連続的に右側へ坐面傾斜角度を0°~20°増加させ、開眼・閉眼状態でそれぞれランダムに実施し、頸部,体幹の傾斜角度を解析する.<BR><BR>【結果】<BR> 静的側方傾斜刺激:頸部,体幹のそれぞれの座面傾斜角度における0°との比較では,座面傾斜角度の増加に対して頸部,体幹傾斜角度も増加した.<BR>頸部,体幹のそれぞれの角度における左右の傾斜での比較では,座面傾斜角度が増加しても左右の頸部,体幹それぞれの傾斜角度で有意差はみられなかった.傾斜角度が増加するにつれて,頸部の傾斜角度は右傾斜がより増加する傾向があり,体幹は左傾斜がより増加する傾向にあった.<BR> 動的側方傾斜刺激:頸部は、開眼時・閉眼時とも坐面傾斜角度8°付近までは坐面傾斜角度が増加するに伴い頸部傾斜角度も急激に増加していき、8°以上は緩やかな増加となり、18°付近で傾斜角度は減少した。<BR><BR>【考察】<BR> 静的側方傾斜刺激:頸部,体幹傾斜角度は20°では全てで有意差があり,20°付近から頸部,体幹の立ち直り(頸部,体幹を水平に保つこととする)よりもバランス反応が優位になり,姿勢保持のために頸部,体幹傾斜角度が増加していると考えられる。<BR> 動的側方傾斜刺激:各坐面傾斜角度で頸部傾斜角度と体幹傾斜角度の有意差はなく、両者とも8°付近で最大となりその後18°付近から減少していることから、同様のパターンで傾斜していると言える。これは頸部・体幹の反応は連動して行われていることを示唆している。<BR><BR>【まとめ】傾斜反応において、立ち直り反応は出現するが、傾斜角度を増加させると、立ち直り反応を抑制しバランス反応が優先されるよう姿勢変化することがわかった。
著者
吉田 昌弘 笠原 敏史 田辺 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.129, 2003

【はじめに】スポーツ・リハビリテーションの中で受傷部位の回復を評価するにあたって,機能レベルのテスト項目のほかに,10M走や垂直跳び,反復横跳びなどの能力レベル(いわゆるパフォーマンス)のテスト項目も行われる.中でも,垂直跳びの能力はジャンプ競技(バレーボールやバスケットボールなど)の重要な要素である.これまでのジャンプ研究の報告から,垂直跳び動作は下肢および上肢や体幹の運動を使った全身運動であると言われている.下肢傷害の機能回復を垂直跳びの結果より判断する場合,上肢や体幹運動を考慮して実施する必要がある.しかし,上肢の運動が垂直跳びに影響を及ぼすことは知られているが,どのような上肢運動が垂直跳びの成績や力学的な要素に関与しているのか十分に明らかにされていない.本研究はこの点を解明するために調査を行い,若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】対象は健常男子名(平均年齢21±1[SD]歳,身長173±5cm,体重58±5kg,BMI19±1).「垂直跳び」は助走なくその場で出来るだけ高く飛び,壁面に設置した垂直跳び計測用ボードにあらかじめチョークの粉をつけた指先をつけるよう指示し測定した.対象は,肩関節屈曲0度(T1),肩関節屈曲90°(T2),肩関節屈曲180度から伸展運動させ(T3),続いて屈曲運動を行わせた.肩関節屈曲30度(T4),肩関節120度(T5)から屈曲運動のみ行わせた.これらと,肩関節180度で固定(T6)して行ったときとを比較した.各課題5回ずつ行わせ,うち最高と最低値を除く3回のデータを用いた.なお,各運動課題はランダムに行った.さらに,同時に,床反力計を使って垂直方向の力も計測した.【結果】垂直跳びの成績はT1=58±6cm, T2=56±7cm,T3=55±8cm,T4=55±7cm,T5=51±7cm,T6=49±7cmであった.フォースプレートからZ方向の大きさは,各被検者ごとの差を取り除くため,ノーマライズを行い,各被検者の体重を引き,体重で除したものを用いた.その結果,T1=14.4±0.3,T2=13.9±0.4,T3=14.3±0.3,T4=13.4±1.2,T5=12.9±0.3,T6=13.1±0.5であった.【考察】本研究では,垂直跳びにおける上肢の振りの関与について,上肢運動に条件を設定して行った.T1からT3は上肢を振り下ろす運動範囲に条件をつけて行い,上肢を固定した場合に比べ,垂直とびの高さは大きく,z方向の力成分も大きかった.このことから,上肢を振り下ろす運動により,床からの反力を得ている可能性がある.T4とT5は上肢を振り上げる運動範囲に条件をつけ,運動範囲が小さい場合,垂直跳びの高さが減少し,z方向の力成分も減少していた.同様に,上肢を振りあげるも高く飛ぶために必要な床からの反力を得ているものと考える.
著者
笠原 敏史 福島 順子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

(1)2頭のサルに対する訓練と手指機能パフォーマンステストの有用性について検討を行い,(2)サルの大脳皮質第一次運動野の上肢領域(主に手指領域)梗塞作成前の上肢動作をVTRにより,(3)第一次運動野の上肢領域を皮質内微小刺激によってマッピング、(4)さらに梗塞作成後の麻痺の状態ならびに機能回復過程について,上肢運動障害,代償動作を比較した.(1)アクリル板で深さの異なる5つの円柱状の穴(Kluver board)を作成した.訓練前のテスト結果では,2頭のサルとも深さが徐々に増加するにつれ所要時間は増加した.(2)サルの把握動作は,浅い穴では栂指とII指の間にリンゴを挟み,穴が深くなるとIIからIV指を穴の中に差込み,屈曲して掻き上げる方法であった.これは2匹のサルで同様であった.(3)GOFとネンブタール麻酔下で開頭し優位半球の第一次運動野(A12L18)に微小電極を用いて刺激し,マッピングを行った。その結果、中心溝の吻側に内側から外側にかけて,肩領域、肘〜前腕領域,手〜手指領域の順序で筋収縮が観察された.手指領域は,運動野の内側から外側にかけて第Vから第II指の屈曲、伸展が順に誘発された.これらの結果は,従来の運動野上肢領域の体部位局在に一致していた.(4)マッピング終了後,手指領域に梗塞を作成した.両サルとも術後翌日に対側上肢に麻痺を認めた.術後は麻痺側を使うも失敗が多く非麻痺側を用い,数日間は麻痺側を使わなかった.麻痺側を使う際,隣接する肘関節と肩関節に麻痺による運動障害を代償する動作が確認され,特に,肘や肩関節を用いて手先を前後に動かす,身体を傾けるまたは移動する行為が見られた.運動障害からの機能回復が見られると,所要時間の減少とともに代償動作の頻度も減少し,術後1ヶ月と術前でほぼ変わらない成績であった.