著者
福川 裕徳
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は,まず,既存研究等の検討および理論的考察に基づいて構築した監査人の外見的独立性への影響要因を分析するためのフレームワークをさらに精緻化した。そこでは,外見的独立性への影響要因として,監査人の態度,リスク要因(脅威),リスク緩和要因(セーフガード)の3つの要因を設定し,それぞれの要因の具体的内容及びそれらの相互関係について明らかにした。さらに,個々の影響要因を検討するのではなく,これらの諸要因が全体としてどのような影響を外見的独立性に対して与えているのかを,構築したフレームワークに基づいて実証的に明らかにするため,当初予定していた研究方法を変更し,外見的独立性を対象とした大規模なアンケート調査(日本会計学会スタディ・グループによって1998年に実施)から得られたデータを用いて共分散構造分析を行った。多母集団分析(市場関係者と監査役)を行った結果,監査(人)(態度),競争の程度(リスク要因),ローテーション(リスク緩和要因),外部環境(リスク緩和要因),規制環境(リスク緩和要因)といった諸要因が外見的独立性に与える影響が明らかとなった。すなわち,監査役については,態度だけでなく,リスク緩和要因も外見的独立性に影響を与えているが,市場関係者については,外見的独立性に影響するのは態度のみであり,リスク緩和要因は影響を与えないことが示された。こうした結果は,監査人の独立性に対する企業外部の監査利用者の知覚は近年の制度改革によって導入された監査人のローテーション制度によって必ずしも改善されない可能性があることを示唆している。これらの分析結果については,近く論文として公表予定である。
著者
瀧田 輝己 田口 聡志 太田 康広 福川 裕徳 上枝 正幸 武田 史子 椎葉 淳 矢澤 憲一 奥田 真也 原田 保秀
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、我が国でも重要な課題といえる内部統制報告制度およびその監査制度の意義ないし制度的な効果について、理論研究、規範研究、実証研究、および実験研究という4つの研究方法からアプローチすることを目的とするものである。そして、具体的な検討対象である内部統制監査制度の意義や効果を各方法論から多面的に分析していくだけでなく、各研究方法の根底にある基本的な立場を明らかにし、究極的には、監査研究における各研究方法の相互理解ないしコラボレーションの可能性を模索していくことを目指すものであった。3年間のプロジェクトの結果、多面的な方法論から、ワークショップ開催、学会発表、論文執筆をおこなうことができた。