著者
福本 優 岡 絵理子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.323-328, 2017

ハノイにおいて、社会主義時代に建設された画一な集合住宅団地であるKTTは、経済開放を経て、現在までに大きな変化を遂げてきた。KTTは、過密な人口や市街地の住環境の悪化というハノイ市の社会問題の中で、再開発の必要性が訴えられている。そこで、本研究では、先行して再開発が始まったNguyen Cong Tru KTTを対象に、実測調査による全体像の把握と、オープンスペースの利用実態及び住民の意識を明らかにすることを目的とした。調査の結果、経済開放後、KTTにおいても様々な用途で団地のオープンスペースは利用され、その用途の分布の偏りが場所のイメージにも変化を与えていることが明らかとなった。また、住民はオープンスペースを占有しつつも、他の住民と相互に調整しながら利用することで、団地のオープンスペースに活気ある風景を生み出していることが明らかとなった。これらは、今後の再開発において、豊かな風景を生み出すためのマネジメントや土地利用の決定に示唆的な知見をもたらすと同時に、我が国の集合住宅団地の再生にも共通する新たな知見を与えた。
著者
福本 優 大平 和弘 藤本 真里 赤澤 宏樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.777-782, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

本研究は、神戸市の緑地協定に基づく自主管理型開発公園について、空間的特徴と協定に基づく管理や責任に関する所有者意識の実態について文献調査とアンケート調査により明らかにした。調査の結果、自主管理型開発公園は空間的特徴から「エントランス型」「分離型」「裏型」の3つに類型され、それらは開発規模や接道条件により影響されることがわかった。「エントランス型」「分離型」として計画されると公園の自主管理意識が増加し自分たちで実施できる管理項目については自主的に管理している一方で、「裏型」として計画された自主管理型公園は維持管理が外注され自主管理意識が減少することが明らかとなった。加えて、「エントランス型」「分離型」では自主管理型開発公園を地域へ開放する意識は高いが、「裏型」になるとその意識も低下することが明らかとなった。また、自主管理自体の課題も多く所有者が開発公園を自主管理するための支援の必要性も明らかとなった。今後は開発協議の時点でのデザイン誘導や維持管理の支援の仕組みを検討することで都市空間の質的な向上に寄与し、持続的な管理が可能な自主管理型開発公園の在り方が必要であると考えられる。