著者
石本 万寿広 佐藤 秀明 村岡 裕一 青木 由美 滝田 雅美 野口 忠久 福本 毅彦 望月 文昭 高橋 明彦 樋口 博也
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.311-318, 2006-11-25
参考文献数
34
被引用文献数
2 15

水田内におけるアカヒゲホソミドリカスミカメの発生消長を調査する手段として既に確立されているすくい取り法の代替手段として,合成性フェロモントラップの有効性を評価した.トラップは両面に粘着物質を塗布した粘着トラップを使用し,誘引源として合成性フェロモン0.01mgを含浸させたゴムキャップを粘着板上辺の中央部に設置した.粘着トラップは,イネの草冠高かそれよりやや低い位置に設置すると捕獲効率が高かった.そこで,2005年6月に,粘着トラップを新潟県上越市・長岡市,富山市の各水田2筆の中央部,イネの草冠高に設置し,誘殺される雄数を毎日調査した.また,約5日間隔でトラップの位置を中心に捕虫網ですくい取りを行い,成虫数の推移を調査した.すくい取り調査で,地域,品種を問わず6月中旬から7月上中旬にかけて成虫が発生し,7月中旬に減少し,その後,出穂期の早い品種で成虫の増加傾向が早くなり8月中旬までには減少するという成虫の発生消長が明らかとなった.水田内に設置した粘着トラップの誘殺雄数の推移は,概ねすくい取り調査での雄数の推移とよく似たパターンを示した.したがって,水田内で本種のモニタリング手段としてフェロモントラップが利用できる可能性を示唆している.