著者
岸本 圭子 岸本 年郎 酒井 香 寺山 守 太田 祐司 高桑 正敏
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.159-170, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
32

東京都大田区の埋立地に成立する東京港野鳥公園では、国内外来種であるリュウキュウツヤハナムグリの生息が確認されている。園内には他にも外来の個体群である可能性が高いハナムグリ亜科2種が目撃されている。園内で発生しているこうした国内由来の外来種が分布を拡大し東京都の内陸部へ侵入すれば、深刻な生態系改変や遺伝子攪乱の脅威も予想されることから、早急に現状を把握する必要がある。本研究は、東京港野鳥公園で出現が確認されているハナムグリ亜科5種(コアオハナムグリ、ナミハナムグリ、シロテンハナムグリ、シラホシハナムグリ、リュウキュウツヤハナムグリ)を対象に、2014年から2016年に野外調査を実施し、発生状況および利用資源を調べた。その結果、リュウキュウツヤハナムグリは、成虫は自然分布地と同程度に発生量が多いこと、園内に植栽された複数の植物の花や樹液に集まること、土壌中に幼虫が高密度で生息していることが明らかにされた。さらに、これらの幼虫の密度が高い地点の土壌表層部が大量の糞で埋め尽くされている状態であることがわかり、土壌生態系や落葉の分解に大きな影響を与えている可能性が考えられた。また、リュウキュウツヤハナムグリだけでなく、コアオハナムグリ、ナミハナムグリ、シラホシハナムグリも、成虫が東京都区部や近郊に比べて数多く発生していることがわかった。これらのハナムグリ亜科成虫では、花や樹液以外にも特異な資源利用が目撃されており、園内のハナムグリ成虫の利用資源が不足していると推察された。このことから、採餌範囲を広げる個体がますます増えることが予想され、外来のハナムグリ種の内陸部への分布拡大が懸念される。今後もこれら外来ハナムグリ種の発生状況を継続的にモニタリングしていくことが重要だと考えられた。また、DNAレベルの詳細な研究を行い、外来ハナムグリ個体群の起源や侵入経路を解明する必要があるだろう。
著者
島野 智之 蛭田 眞平 富川 光 布村 昇 寺山 守 平野 幸彦 馬場 友希 西川 勝 鶴崎 展巨 佐藤 英文
出版者
首都大学東京小笠原研究委員会
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
no.41, pp.137-144, 2018-07-31

小笠原諸島のうち、弟島3地点、父島8地点、母島6地点、合計17地点から、192個体あまりの土壌節足動物が得られた。同定の結果37種と判別され、このうち、学名が確定したりあるいは未記載種でも種レベルで同定が行われたりしたものは、26種であった。特筆すべきは、グンバイウデカニムシCheilidium aokii Sato, 1984の2例目の記録、アシジロヒラフシアリTechnomyrmex brunneus Forel, 1895の弟島からの初記録、また、アサヒヒメグモEuryopis perpusilla Ono, 2011も母島初記録であった。外来種であるホソワラジムシPorcellionides pruinosus(Brandt, 1833)は、父島と母島から見いだされた。
著者
寺山 守 砂村 栄力 藤巻 良太 小野 高志 江口 克之
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.55-59, 2022-06-25 (Released:2022-06-29)
参考文献数
25

The invasive ant Technomyrmex brunneus Forel, 1895 originally distributed in tropical Asia, in late years has invaded the island of Hachijo-jima in Tokyo Prefecture. On this island the population of T. brunneus shows high-density in residential areas, causing serious problems as a household pest. During a preliminary survey carried out in 2017, this species was found to be present in all the five settlements of the island, with high density in four of them. Therefore, in order to confirm the invasion fronts in the island, we conducted a time-unit sampling in the autumn of 2020. We sampled along the coastal perimeter road as well as the mountain roads and trails toward Mt. Nishi-yama and Mt. Higashi-yama. The result of our survey shows that T. brunneus is widely distributed along the coastal road. On the other hand, at the foot of Mt. Nishi-yama and Mt. Higashi-yama, it occurs only near the entrances of the mountain roads and trails, while the inner forests have not yet been invaded.
著者
寺山 守
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.361-368, 2000