著者
福永 裕一 澤 進一郎 澤 完
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.141-147, 2008-08-20 (Released:2017-03-25)
参考文献数
5

四国は四季を通じて雨量が多く,豊かな森に覆われており,その林床には有機質に富んだ腐食土や適度な湿度が必要である地生ランが多く自生しており,菌寄生性無葉緑の地生ランであるオニノヤガラ(Gastrodia)属も比較的数多く自生している.その中でもヤツシロラン類は,開花期間が短く,朔果は受粉後約30-40日後に裂開し種子を飛散し腐敗するため,地上部に出現している期間が短く,更には結実個体標本では同定困難なものが多いため,その分布状況の詳細については十分に把握されていなかった.そこで我々は,四国で現地調査並びに大学や博物館での標本調査を行い,ヤツシロラン類の分布調査を行ってきた結果,ヤツシロラン類の新産地の発見や,過去にハルザキヤツシロラン(G. nipponica (Honda)Tuyama)やアキザキヤツシロラン(G. confusa Honda et Tuyama)であると思われていたものの中にクロヤツシロラン(G. pubilabiata Sawa)が含まれる等の事実が判明した.そこで,今回の調査により得られた知見をもとに,現在までに明らかとなった四国におけるヤツシロラン類の分布調査結果を報告する.
著者
末次 健司 福永 裕一
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.19-21, 2019-03-31

大阪市立自然史博物館標本庫(OSA),首都大学東京牧野標本館(MAK)と鹿児島大学総合研究博物館植物標本室(KAG)における標本調査の結果,鹿児島県の奄美大島,中之島および黒島で採取されていたムヨウラン属の未同定標本のなかに,ムロトムヨウランを見出すことができた.これらは,黒島,中之島および奄美大島におけるムロトムヨウランの初記録となる.本種は,閉鎖花のみをつけるクロムヨウランの開花型の変種であるトサノクロムヨウランやヤクムヨウランに似るが,1)花茎がより長い,2)花序がより長い,3)萼片および花弁の幅がより狭い,4)唇弁の先端部がごくわずかに3裂する,5)蕊柱の長さの3/5–2/3程度が唇弁と癒合する,6)結実時の果実の色が茶褐色である,7)蒴果が斜上に着く,等の特徴から区別が可能である.